Jリーグ・日本代表につながる戦い。学生サッカーを見逃すな!


関西学生サッカー連盟 技術委員長

松本 直也 氏(桃山学院大学 監督)

関西学生サッカーが面白い。各チームともトレーニングや戦術などの研究を重ね、選手たちのレベルも高く試合は白熱。すでにガンバ大阪に内定した髙尾瑠選手(関西学院大学)をはじめタレントが多いのも魅力だ。選抜チームがプロと対戦するステップアップリーグも関西だけ。8月末からは全国大会である総理大臣杯が関西で開催され、9月16日からはリーグ戦後期日程もスタートする。関西学生サッカー連盟の松本直也技術委員長に、今シーズンの注目選手やこれからの学生サッカーの見どころについて伺った。

 

 

強豪大学も、選抜チームも。学生サッカーは見どころがいっぱい。

――毎年関西学生サッカーからJリーグに入団する選手がいますね。天皇杯でも今年は関西学院大学がプロを破って3回戦に出場しました。

10~20年前にくらべたら日本の育成年代のレベル全体が上がっているので、学生リーグ全体的に技術レベルの高い選手が多く在籍しています。学生リーグは全国9地域に分かれていますが、関西は関東に次ぐ規模があり選手層も厚いですよ。もともとサッカーが盛んな土地柄でJクラブのアカデミーも充実していますし、高体連も昔から盛んです。地元で育った選手が大学を経由してプロへ行くケースも多く、大学自体のレベルを見ても日本でも上位のほうのリーグだと思います。

 

――戦術や指導技術などのレベルも高い印象です。

大学は研究機関ですし、大学教授として研究に携わる監督もいます。そういう大学の環境を活かし、トレーニングはもちろん、サッカーに関する研究の成果を現場にフィードバックするという作業も行われています。特に近年は情報技術の発達が著しく、世界各国の代表チームやビッグクラブのさまざまなデータも入手・分析することができますから、それも選手の技術や戦術的なレベルアップにつながっていると思います。

 

――大学ごとの強化もありますが、関西学生サッカー連盟では選抜チームの強化にも取り組んでおられますね。

関西学生サッカーには、年間を通じて選抜チームが戦う「関西ステップアップリーグ」という大会があります。これは、選抜チームと関西のJクラブ4チームがH&A方式で戦う公式戦です。学生リーグで目立った選手を毎節ピックアップして「ラージグループ」をつくり、ステップアップリーグの開催に合わせてそこから選抜チームを編成する。学生リーグで活躍してステップアップリーグに呼ぶということを繰り返し、年間を通じて本当にいい選手をピックアップして関西学生選抜を編成して、2月に開催される「デンソーカップチャレンジサッカー」に送り出します。最終的には全日本大学選抜としてユニバーシアードをはじめとする国際大会に出場するところが目標で、オリンピック代表が視野に入る選手も出てくるでしょう。

 

――どんな選手が選抜チームに選ばれますか?

ポジションにもよりますが、個としての特長を持っている選手は目立ちますね。今、育成年代からサッカーのレベルアップが行われていますから、それなりに経験があり技術もある選手は大学でもいくらでもいます。その中でも飛び抜けて目立つものを持っているか。スピード、高さ、ヘディングの強さ、身体は小さくても仕掛けられるとか、ドリブルでキープできるとか。たとえば、今シーズン松本山雅に入団した下川陽太選手は、SBもSHもできて激しいアップダウンをタフに繰り返す上、右利きだけど左でも正確なクロスを上げられるという非常に特徴的なプレーヤーでした。2部リーグの大阪商業大学所属でしたが1年生の時から注目度が高く、ステップアップリーグの視察に来ていた松本山雅のスカウトの目にとまり、3年生で早くも入団が内定しました。

2018年5月13日に行われた関西ステップアップリーグvsガンバ大阪のスターティング11。前列左よりMF15若山修平(桃学大)、MF6森主麗司(関西大)、DF2黒川圭介(関西大)、MF16牧野寛太(関西大)、FW11草野侑己(阪南大)、後列左よりMF7堀内颯人(大体大)、GK1立川小太郎(大体大)、DF5田中颯汰(大体大)、 FW10毎熊晟矢(桃学大)DF3羽田健人(関西大)、DF4荒木隼人(関西大)

 

代表スタッフやJクラブも注目。この選手のプレーが見たい!

 

――技術委員長として、今、注目されている選手を教えてください。

全日本大学選抜でも活躍した選手でいくと、ガンバ大阪に内定したDF髙尾瑠(関西学院大学・4年)。SBですが攻撃が持ち味で、仕掛けるタイミングやクロスの質が素晴らしく攻撃の起点になれる選手です。MF末吉塁(大阪体育大学・4年)は、身長は高くないんですがスピードと突破力があります。DF黒川圭介(関西大学・3年)もSBで左サイドから攻撃をつくっていく。そして、FW草野侑己(阪南大学・4年)もいいですよ。前期のリーグ得点王で、一瞬の抜け出しはプロレベルです。

関西学生サッカーリーグ前期の上位チームを見ていくと、首位の大阪体育大学は末吉の他にもDF菊池流帆(4年)が全日本大学選抜の経験者ですし、ストライカーのFW林大地(3年)はフィジカルの強さが魅力です。MF田中駿(3年)はボランチもセンターバックもできる選手。高さがあるけど足元の技術もしっかりしていて、今の大体大を引っ張る存在です。

2位の関西学院大学MF中野克哉(4年)MF山本悠樹(3年)の二人も注目です。技術があって、中盤ですがラストパスもシュートも打てる。中野は昨年得点王でした。

3位の関西大学MF牧野寛太(3年)ですね。攻撃のアクセントになって、黒川とともに左から仕掛けていく感じです。DF荒木隼人(4年)も力のあるCBでキャプテンとしてしっかりチームを統率しています。

4位のびわこ成蹊スポーツ大学は、FW井上直樹(3年)FW青山景昌(3年)です。井上はスピードがあってゴリゴリいくタイプ。青山はキックの制度がすごくて、二人が得点にからむシーンも多いですね。

5位の桃山学院大学は得点ランク上位のFW毎熊晟矢(3年)ですね。もともと技術力があってボールを失わない選手ですが、今年はシュートの決定力がぐんとあがりました。

6位の京都産業大学もいい選手がたくさんいますが、いちばんはFW久保吏久斗(4年)ですね。あの運動量。守備もしっかりハードワークしますし、スピードのある抜け出しもある。本当に京産大の要の選手です。

前期は7位だった阪南大学は総理大臣杯出場を決めています。注目は、先にあげたFW草野侑己(4年)ですね。

リーグ戦は8位の大阪学院大学ですが、関西学生サッカー選手権大会では優勝して総理大臣杯出場を決めました。MF三木水都(4年)はハードワークが持ち味で、関西選抜チームでも活躍しています。DF生駒稀生(3年)はDFラインをコントロールするクレバーな守備の要で、ヘディングの打点が高く空中戦に強い選手。FW井上泰斗(3年)は生粋のセンターフォワードで、当たり負けしないフィジカルと得点感覚に優れています。

チームは前期9位の成績でしたが立命館大学MF田中康介(2年)は関西の大学から一人だけU-19日本代表候補に選出されています。

 

――U-19日本代表といえば、5月にJ-GREEN堺でU-19大学選抜とのトレーニングマッチもありました。

日本サッカー協会全日本大学サッカー連盟とはしっかりした協力関係があります。協会も大学も、いい選手を育てて日本代表を強くするというのは同じ考えですから。5月のトレーニングマッチでも、対戦相手を同年代の大学生にしたいと協会からリクエストがありました。トレーニングの一環というだけではなく、普段は見られない大学生のプレーも見てもらえたと思います。関東大学リーグでは代表スタッフがよく視察に行っているようなので、関西にもぜひ来てほしいですね。高卒でプロに行けなくても大学を経てプロ入りする選手は少なくないですから、一緒に強化していきたいと考えています。

 

――リーグ戦の前期は終了しましたが、後期の前に総理大臣杯がここ関西で開催されます。全国の強豪24チーム、関西からは4チームが参加します。見どころを教えてください。

関西からは、大阪学院大学大阪体育大学桃山学院大学阪南大学の4チームが出場します。どこも実力のあるチームなので、ベスト4には必ず入ってくると思います。

他の地域では、常連となる強豪大学がいくつもあります。九州だと福岡大学。天皇杯予選ではJ2リーグを破って2次ラウンドまで進出しました。東北だと仙台大学が注目です。

東海は常葉大学東海学園大学中京大学の3チーム。ここは特徴的な選手が多く、東海学園大学のMF児玉駿斗(2年)FW榎本大輝(4年)は名古屋グランパスに、DF鹿山拓真(3年)はV・ファーレン長崎に内定しています。

関東は、法政大学明治学院大学駒澤大学明治大学早稲田大学専修大学に決まりました。この中では、第一代表の法政大のFW上田綺世(2年)はトゥーロン国際大会に呼ばれていますしオリンピック代表に召集される可能性もあります。また、昨年2部から上がってきて現在リーグ首位の早稲田大学も注目で、GK小島亨介(4年)はU-20にも選ばれましたし、MF相馬勇紀(4年)は名古屋グランパスに内定、DF冨田康平(4年)は京都サンガに内定しています。FW武田太一(3年)も関西出身で得点力があります。

2018年のデンソーカップ海外キャンプに全日本大学選抜として参加した関西のメンバー。左から松本直也監督(桃学大)、黒川圭介(関西大)、髙尾瑠(関学大)、菊池流帆(大体大)、末吉塁(大体大)、草野侑己(阪南大)

 

関西学生サッカーリーグ、後期はますます目が離せない。

 

――改めて、関西学生サッカーリーグの今シーズン、前期を終えての感想と後期の見どころを教えてください。

前期の成績を見て、上位は順当だと思います。首位の大体大は守備力ですね。守備が安定していて失点が少ないのが思い切った攻撃につながっています。順位的には大体大が少し抜けている感じはありますが2位以下はそんなに差はありませんので、インカレ(全日本大学サッカー選手権大会)に出場できる4位以内となると前期7位の阪南大あたりまではまだまだチャンスはあります。阪南大がこの位置にいるのはちょっと予想外でした。技術的に高くて仕掛けられる選手は多いのですが、バランスを取るところで苦戦している印象です。ただ、選手層が厚いので後半はしっかり修正してくるでしょう。大学チームは夏の合宿を経験すると劇的に成長します。新入生がチームに馴染んできたり急成長する選手が現れたりしますから、チーム力は間違いなくあがってきます。9月16日からの後期リーグはますます面白くなりますよ。

 

――降格ラインはいかがですか。1部リーグへ昇格した2チームが1シーズンで降格するケースが多いので、1部と2部Aのレベルの差は大きいのかなと思いますが。

確かに、昇格組の同志社大学甲南大学が前期は11・12位という結果でした。ただ、同大は終盤に勝点を積み上げてきたのでこのままでは終わらないと思います。実は、昇格チームが1シーズンで降格することについては、技術委員会でもこれまで議論してきました。そこで今シーズンから2部Aリーグのチーム数を10から12チームにして、試合数を増やしました。リーグをしっかり戦うことで力をつけていこうとする狙いです。関西学生サッカー連盟には58の大学チームが所属していますが、選手数も指導者数も設備などの環境面もチームによって大きく差があります。それでも「体育会サッカー部」としてサッカーと向き合い技術の向上に取り組んでいることに変わりはありません。技術委員会では、加盟すべてのチームを見据えた強化に取り組んでいます。リーグ編成の改善もそうですし、JFAから講師を招いたGK講習会や、スペインから指導者を招いたセミナーも開催しました。選抜チームのための「ラージグループ」形成も、すべてのカテゴリーを対象に選手をチェックしています。また、公式戦出場機会の少ない1・2年生を対象にした「新人大会」を行っていますが、これもすべてのカテゴリーに門戸を開いています。「強くなりたい」「うまくなりたい」と思っている選手たちに対して、公式戦を通じてしっかりトレーニングして強化していったら1部まで上がれるんだというところを連盟としてもサポートしています。

 

――1・2年生のための「新人大会」では、全国大会も開催されていますね。

全国的にその年代の選手を強化しようということで、昨年度から「全日本大学サッカー選手権大会新人戦」が始まりました。関西ではこれまでも「新人戦」というトーナメントを行ってきましたが、全国大会の開催にあわせて「新人大会」というリーグ戦での強化に切り替え、全国大会には甲南大学と大阪経済大学が出場しました。ただ、これまで1・2年生に特化した公式戦を行ってきた地域は関西以外ではあまりないため、すべての地域でこういったリーグ戦が開催されているわけではありません。関東ではリーグ戦で出場チームを決定していますが、中には選抜チームを編成して大会に臨む地域もあります。

 

――ところで、松本技術委員長は桃山学院大学サッカー部の監督もされています。チームは好調のようですが、後期に向けていかがですか。

今シーズンは得点力が向上し、前期はリーグで最多得点をあげました。これは、昨年からGKとFWに特化したトレーニングを始めた成果が大きいですね。先にあげた毎熊やFW小松光(4年)をはじめ、みんな本当にしっかりと取り組んでいるので、FW陣全体として得点力が向上しました。課題は守備。上位と比べると失点が多いので、そこを減らすというところです。ただ、監督として一番大事にしているのは「学生の成長」です。サッカーの技術だけじゃない。ぜんぜん違います。試合に向けてのスカウティングから分析結果のプレゼンテーションまで学生主体で取り組んでいますし、普段の練習や試合日の応援の運営・管理もすべて学生が自分たちで行っています。また、本学ではセレッソ大阪と一緒にサッカースクールを開催しているので、クラブのスタッフや地域の子どもたちと交流する中でも得るものがあるでしょう。仲間内でサッカーだけをやるのではなく、自主性をもち、いろんな大人と関わる経験をもってほしいと思っています。

 

大会情報(2018シーズン)

関西学生サッカーリーグ(1部):4月7日~6月17日(前期)/9月16日~11月25日(後期)

関西学生サッカーリーグは関西の58の大学チームが3つのカテゴリーに分かれて前期・後期を戦う。1部リーグは12チームで、通年の成績で上位4チームは「全日本大学サッカー選手権大会」(インカレ)に出場できる(総理大臣杯優勝チームは別枠としてインカレに出場)。また1部と2部Aとの間で入れ替えも行われる。

前期の成績

1 大阪体育大学(勝点30)

2 関西学院大学(23)

3 びわこ成蹊スポーツ大学(22)

4 関西大学(22)

5 桃山学院大学(18)

6 京都産業大学(17)

7 阪南大学(14)

8 大阪学院大学(12)

9 立命館大学(10)

10 近畿大学(8)

11 同志社大学(7)

12 甲南大学(1)

 

Iリーグ(インディペンデンスリーグ):5月~11月

部員数が多いなどの理由で関西学生サッカーリーグへの出場機会が少ない選手のための公式戦。地域ごとにブロックに分かれてリーグ戦を戦い、年間総合優勝チーム決定戦も行われる。また、上位チームは全国大会に進出できる。

 

関西学生サッカー新人大会:4月中旬~9月中旬(予定)

関西学生サッカー連盟加盟全チームの中から希望するチーム(今季は37チーム)の1・2年生がブロックに分かれてリーグ戦を戦う。これまで関西独自の取り組みとしてトーナメント方式の「新人戦」を開催していたが、昨年からオリンピック世代の強化策の一環として地域ごとにリーグ戦を開催することが決定したのに伴い、関西でも昨年度からリーグ戦形式で開催。上位チームは全国大会に進出できる。

 

関西ステップアップリーグ:2月~12月

関西の4つのJクラブと関西学生選抜チームが対戦するH&A方式のリーグ戦。試合は各Jクラブの練習場で行われ、見学は無料。全国のJクラブのスカウトも注目している。

 

関西学生サッカー選手権大会:6月16日~7月8日

関西学生サッカー連盟加盟チームによるトーナメント。関西の春の関西王者決定戦。上位4チームは8月31日から開催される総理大臣杯に出場できる。

 

総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント:8月31日~9月9日

全国9地域から選ばれた24の大学が戦う夏の大学王者決定戦。関西で開催される全国大会で、優勝チームには冬のインカレへの出場資格が与えられる。

 

全日本大学サッカー選手権大会(インカレ):12月12日~12月22

総理大臣杯優勝チームと全国9地域からリーグ戦を勝ち抜いてきたチーム計24チームで行われるトーナメント。大学王者決定戦。

 

デンソーカップチャレンジサッカー:3月

全日本大学選抜チームと全国9地域から選抜された7チーム、合計8チームが参加するトーナメント。大会MVPやベストイレブンが選出されるほか、デンソーカップ全日本大学選抜チーム海外キャンプメンバーも選出される。

 

Text by Michio KII