混戦必至のJFL 2014シーズンへ、滋賀から名乗りを上げる。


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MIOびわこ滋賀 強化部長 中尾 幸太郎氏

アマチュア最高峰のサッカーリーグJFL。Jリーグでも、地域リーグでもない、ある意味、狭間にあるリーグでもがきながらも戦い続け、滋賀という土壌にサッカー文化を根づかせようと奮闘している、MIOびわこ滋賀。強化部長の中尾さんに、スタートした今シーズンへかける想いを聞いてみた。

 

どん底を経験したからこそ、今がある。

 

――まずは、昨シーズンを振り返っていかがでしたか?

「18チーム中の16位。17戦連続で勝てない経験もしました。本当にきびしいシーズンでした」

――原因はどこにあったのでしょう?

「一番の原因は選手のやりくり。主力がごっそり抜けた穴を新人で埋めてスタートしたのですが、うまくいきませんでした。若いチームは負け続けるとメンタルにきてしまうんです。序盤に失点すると“今日も負けるんちゃうかな”と思ってプレーに勢いが出なくなって同じ過ちを繰り返してしまう。ぼく自身、そしてもちろんクラブも17回勝てないという経験がなかったですし、どうすればいいのか? もがきました。どん底でしたね」

――抜けだすきっかけはあったのですか?

「食事会などいろいろやってはみたのですが、きっかけはつかめませんでした。そんなときに、片桐淳至という元Jリーガーが3ヶ月だけ加入してくれたんです。彼のレベルまで行くとゲームを決められる力があるし、年齢も30歳で経験豊富でしたから若い選手に対してもガツンと言ってくれる。プレーだけでなく気持ちの面でも引っ張って、点を取られても“まだまだ行ける”とチームを盛り立ててくれました」

――その片桐選手は今季いません。

「今シーズンはスーパーな選手がいないので、チーム全体の総合力で戦わないといけません。失点の多かった昨シーズンの失敗を踏まえて、後ろを厚くしたシステムで1点を取ったらそれを守りきれる堅守のチームづくりを行ってきました」

――まずは守備を整えて戦うと。

「ガンガン攻めるサッカーの方が観ていておもしろいかもしれません。でも、昨シーズンはそれで負けてしまいました。全員で走り回って、最後にはカラダを投げ出してでも守りきる。それが、今のぼくたちのサッカーなんです」

――失敗から学んで今のチームをつくっている。

「どん底を経験したからこそ、わかったこともあります。今シーズンはこれまでの経験を糧にしたチームになっていると思っています」

 

 

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チームづくりはマイナスからのスタート。

 

――チームづくりで苦労するところは?

「毎シーズン、15人くらいの選手が入れ替わるんです。いい選手は引き抜かれるし、選手自身も上のカテゴリにチャレンジしたいからと辞めていく。新しい選手の合流時期もバラバラでメンバー全員そろうのが遅くなるので、チームづくりに時間がかけられない」

――選手が入れ替わると、チームを積み重ねられません。

「主力が抜けたところを新人で埋めていくことになるので、ゼロからではなくマイナスからのスタート。限られた時間で新しいチームをつくっていかないといけないので、選手の特徴を早く見極めていろいろ組み合わせながら、どの組み合わせだとうまくはまるのか? を、練習とトレーニングマッチをやりながら探していきます。そのうえ、うちのチームはオーソドックスなシステムを採用していないから新人選手がすぐに適応できない。最初は何をやっていいのかわからずに戸惑うので、トレーニングマッチで実践を積みながら理解してもらい、チームを煮詰めていきます」

――監督の東さんは長くMIOびわこ滋賀の指揮をとっています。

「監督に就任する前から歴代監督のコーチをしていたので、MIOのすべてを知っています。信じて任せていますよ。まだ31歳と若いので経験を積ませたいというのもあって、連敗し続けても解任しませんでした。昨シーズンはJ3の関係で降格がありませんでしたしね」

――今シーズンのJFLはJ3ができたことで新しい顔ぶれが増えました。

「知らないチームがたくさんあります。これまでは他のチームでも“こういうチームに仕上げてくるだろうな”ということが大体わかっていたんですが、今シーズンは未知のチームが多くて読めません。でも、ほくたちにはJFLで長く戦ってきたというプライドがあります。新しいチームに簡単に負けるわけにはいきませんよ!」

 

 

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混沌とした今シーズンのJFLを、
本気で獲りに行く。

 

――JFLというリーグの魅力を教えてください。

「Jリーグでもなく、地域リーグでもない。アマチュアとプロが混じったサッカーで非常に独特です。Jリーグはオーソドックスなパスサッカーをするチームが多いのですが、JFLでそんなサッカーをするチームはいない。表現は悪いのですが、バタバタしているんです。お互いボールを持ったら早く前に行こうとしますし、切り替わりが激しいからテニスの試合を見ているようでもありますね」

――そうなってしまう理由は?

「先ほども言いましたが、シーズンごとに選手がごっそり入れ替わるのでチームを積み重ねられないんです。パスをつないでポゼッションを高めるサッカーを確立するのは時間がかかりますし、それができる選手の確保も必要になってきます。そして、JFLのチームには前の方にスーパーな選手がいることも多いんです。例えばFWに元Jリーガーがいたら、早くボールを送って個の力で決めてもらう方が効率はいいですから」

――元Jリーガーのようなプロもいますが、ほとんどの選手はアマチュアですよね。特徴はありますか?

「社会人として働きながらサッカーしている選手たちは非常にまじめ。10分前行動をとるし、遅刻や無断欠席もありません。サッカーをプレーすることが大好きですから、練習で手を抜くこともしませんよ。そこは試合でも同じです。倒れてファールをもらいに行ったり、カッとなって審判に文句を言ったりもせず、ひたむきに戦っています。選手たちはJリーグへのステップアップも目指していますから、サッカーに向かう気持ちも、プレーの質も高いんです」

――そんな選手がしのぎを削る今シーズンのJFLをどう見ていますか?

「昨シーズンの上位チームがJ2・J3に行き、新しいチームも参入してきて、どうなるのかまったく読めない。でも、だからこそ本気で優勝が狙えると思っています。毎年“優勝を目指す”と言っていますが、現実としてきびしいときもありました。でも、今シーズンは違いますよ!」

 

 

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滋賀でサッカー文化の土台をつくっていく。

 

――MIOは滋賀という地域にサッカーを根づかせる活動にも積極的です。

「滋賀全体のサッカー文化を盛り上げたいという気持ちもありますが、そのまえにまず、“ホームタウンである草津市と東近江市にサッカーを根づかせたい”という想いがあります。J3に参入できていたら違っていたかもしれませんが、JFLではまだまだ難しいですね。リーグで勝ち続けることより、天皇杯での1勝や国体で全国に行く方が騒がれますから」

――J3への初年度参入は残念でした。

「Jクラブになると今はMIOに興味を持っていない人たちにも注目されて、“応援してやろう”という気持ちを持ってもらえたかもしれませんし、スポンサーや助成金、放映料とお金の面でも変わってくる。初年度から行きたかったですね。でも、Jリーグへの準加盟申請は継続して行っています。今回の課題を解決して、再度チャレンジしますよ!」

――クラブとしての短期目標はJ3参入だと思いますが、中期・長期目標はいかがでしょう?

「8年後、10年後に滋賀国体が開催されるのであれば、それまでにJ2入りを果たしたいですね。そして、J1を目指していく。滋賀に浦和レッズや鹿島アントラーズなど東のビッグクラブが来るところを、子どもたちに見せてあげたいんです。そのためにも、まずJ3。関西にはJ1クラブとJ2クラブがあるから、J3クラブも必要だと思っているのですが、環境など足りない部分もまだまだあります。今後は行政や地域の方々と力を合わせて、スタジアムや練習場などサッカーを楽しめる場所を整えていきたいと考えています。そして、それを続けていくことで、滋賀のサッカー文化の土台をつくることができればうれしいですね」

――MIOには熱いファン・サポーターもいます。彼らも滋賀のサッカー文化を支えています。

「どんなに遠いところでも応援に来てくれる熱いファン・サポーターがいます。ぼくたちも彼らの熱さに負けない戦いをして、ひとつでも勝利をプレゼントしたい。そして、いっしょに優勝を味わえれば最高ですね!」

 

Text by Masami URAYAMA