目の前にチャンスがあるなら、 つかみたい。


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ガンバ大阪 DF 西野 貴治 選手

サッカーチームは水物だ。上昇気流に乗ってトップにのぼることもあれば、激流に飲まれ思いもよらぬ場所に落ちてしまうこともある。しかし、そんな激動のチームでチャンスをつかみ、育っていく選手が必ずいる。ガンバ大阪・西野貴治選手。J2に降格したチームでチャンスをつかみ、J1に上がった現在も試合に出場し成長を続けている。Jリーグと同じ93年生まれの21歳。未来を見据えた“今の言葉”を聞いてほしい。

 

 

チャンスは必ずくる!
と信じていた。


−−トップ3年目、今季はいかがですか?

「最初はリーグ戦に出られなかったのですが、“絶対にチャンスがくる!”と信じて練習でアピールしてきました。12節の徳島戦で使ってもらえたときに無失点で勝てて、次の名古屋戦でも結果を残せた。与えられたチャンスを生かせたことが、今につながっていると思います」


−−昨季はレギュラーでしたが、今季のスタートは違いました。

「試合に出られないからと腐っていたら、選手として終わってしまいます。監督は状態がよくなれば使ってくれると思っていましたし、練習でも自分を見てもらえていると感じていましたから、それに応えたい気持ちがありました」


−−長谷川監督から求められているものは?

「まずは高さだと思います。DFの中で一番、背が高いですからね。ガンバはクロスからの失点が去年は多かったので、そこはぼくがしっかりと防がないといけない。また、自分の武器であるヘディングでは得点も狙っていきたいですね」


−−近年のCBは多くを求められます。

「むずかしいポジションですが、だからこそおもしろいと感じています。最近のCBは守備でチームを後ろから支えるだけでなく、ゲームをつくる役割も担っている。ぼくもビルドアップ能力をもっと上げたいですね。世界には身長が高くてビルドアップもできる選手がたくさんいますから」


−−課題はどうやって見つけるのですか?

「試合の中です。できなかったことはビデオでチェックして、次の練習から意識して修正しています。すぐに克服できなくても、毎日の練習で取り組めば身についていくし、ひとつずつ課題をクリアしてレベルを上げていけば、さらに上の世界を狙えます」


−−上を目指している中で、自身の成長を感じる?

「毎年、感じています。1年目はトップチームの早さとうまさにとまどって、それに慣れようと一所懸命でした。2年目はJ2でしたが、チャンスをもらえて30試合くらい出場できました。最初は緊張したし、ミスもたくさんありましたが、次第に対応できるようになって。3年目の今季、J1に上がってもレベルの差をあまり感じなかったのは、これまでの経験で自分が成長できているからだと思っています」

 

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(c)GAMBA-OSAKA

ガンバ大阪ジュニアユースで
一番ヘタだった。


−−サッカーをはじめたきっかけは?

「父親の勧めです。小学生のころから背も高かったし、足も遅くなかったのですがインドア派で(笑)。当時流行っていたカードゲームばかりやっていたら、見かねた父親から“なんでもいいからスポーツをしろ”と言われました。何年間かは逃げていたのですが、小学4年のときに開催された日韓ワールドカップで、ぼくの周りでもサッカーが一気に盛り上がった。それで、小学校のチームに入ってみたら、すごく楽しくて。サッカーが大好きになりました」


−−ポジションは?

「最初はFWでした。でも、小学5年のときにCBをやる選手がいなくて1年だけの約束でCBになって。結局、次の年でもそのままやってくれと言われて、ずっとCBです」


−−FWからCBのコンバートはイヤじゃなかった?

「守ってボールを取ることが楽しかったし、前に走って攻撃に参加することもできましたからCBでもいいかなと」


−−そのころの夢は プロのサッカー選手になること?

「サッカー選手というより、ガンバの選手になりたいと思っていました。ぼくの地元は万博スタジアムのすぐ近くなんです。サッカーをはじめたころからガンバの試合を観に行っていましたから、“大人になったらこのピッチでやる”と勝手に思い込んでいましたね」


−−そして、ガンバ大阪のジュニアユースに加入します。

「ガンバの選手になりたいと夢みていても、セレクションに合格するのは無理だと思っていました。勧めてくれた父親ともケンカしたんですよ。“茨木市の選抜に落ちている自分が受かるはずない。レベルの違いを感じるだけだ”って。でも、友だちのお母さんがうちの子も受けるからと書類を用意してくれたので試しに受けてみたら、ぼくだけ受かった」


−−ガンバ大阪アカデミーの眼鏡にかなったんですね。

「びっくりしましたよ。こんなにヘタな選手を合格させるガンバのコーチはすごいと思いました。今でも、そのころの友だちに会うと、“なんでおまえがプロやねん”って言われますからね(笑)」


−−実際に練習してみてはいかがでしたか?

「まわりの選手がうますぎてカルチャーショックを受けました。ぼくが一番ヘタで(苦笑)。でも、それがわかっただけでも、加入してよかったと思ったんです。自分の実力がわかりましたから。実際、最初の2年間は試合に出られなくて、ようやく出られるようになったのは中学3年生になってからです」


−−試合に出られないことが続くと気持ちも折れると思うのですが、やめようと思わなかったのですか?

「やめるという選択肢はなかったですね。両親から“はじめたことはやめない”という教えを受けていて、今でもその気持ちは持っています。当時も“やっていけるのかな?”という不安はあっても、やめることを考えたことがなかった。それに、試合に出られないのは自分に技術がないからだとわかっていましたからね。“少しでもうまくなりたい!”という気持ちを常に持っていて、練習が休みの日でも遊びに行かずに小学校でボールを蹴っていました」


−−マジメですね。

「負けず嫌いなんですよ。あとは、そのころから“絶対にプロになる!”という強い想いを持つようになっていたことも大きかったと思います」

 

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(c)GAMBA-OSAKA

ツネ様二世になるのではなく、
西野二世をつくっていきたい。


−−ガンバ大阪アカデミーの特長はなんだと思いますか?

「技術の練習を重視することです。トップチームと同じサッカーをするために、止めて、蹴るという基本練習をたくさんしました。それが、今のぼくをつくっています。背の高さは両親が与えてくれたものですが、足りなかった技術はガンバのアカデミーが育ててくれました」


−−トップチームも意識した?

「ジュニアユースに入ってからは万博スタジアムで行われるホームゲームを全て観られたので、トップチームで戦う選手がどんなプレーをしているのか意識してチェックしていました。一流のプレーを間近で観て刺激を受けましたし、勉強にもなりました」


−−目標となる選手はいましたか?

「最初は宮本恒靖さんです。そして、山口智さん。リーダーシップがあってビルドアップもできる。ああいう選手になりたいですね」


−−そういえば、ツネ様二世って言われることがありますよね?

「選手としてのタイプは違いますが、宮本さんのプレーを観て育ってきたので光栄です。でも、そう言われるのは “西野”という選手を確立できていないからだと思う。だれかの後を追うのではなく、自分のCB像を確立して、いつか『西野二世』と呼ばれる選手をつくれるように。がんばっていきたいです」

 

 

いろいろな選手から吸収して、
なんでもできる万能CBに。


−−ガンバ大阪には激しいポジション争いがあります。

「競争は激しいのですが、そのぶん成長できています。ガンバにはいいお手本がたくさんありますからね。例えば、岩下選手は前に強い意識を持ったCBでうまさがある。経験も豊富で、こうしてほしいという要望も、こうしたらいいというアドバイスもよく受けます。丹羽選手はラインコントロールがうまい。ラインを上げるタイミングなど、コンビを組んでいると勉強になります」


−−組みやすいタイプはあるんですか?

「自分に特長がないからか、どんなタイプでも合わせられます。前に強い岩下選手と組むときはカバーの意識を高めてプレーしていますし、逆にカバーしてくれる丹羽選手といっしょのときはぼくが潰しに行ったりします」


−−CBとしての特長を持ちたい?

「前に潰しに行くことも、後ろでカバーすることも、どちらもできる『万能CB』というのが、ぼくの武器だと思っています。これからもいろいろな選手のいいところを吸収して、なんでもできる選手になりたいですね。もちろん、ストロングポイントであるヘディングも磨いていきたい。落下地点を予測して後ろから走り込んで高さで勝てれば、外国の選手が身体でバーンと当たってきても上から叩ける。もっと強く、うまくなるためにシジクレイコーチといっしょに取り組んでいます」


−−対戦して苦手な選手はいますか?

「フィジカルの強い選手ですね。Jリーグだと鹿島アントラーズのダヴィ選手やFC東京のエドュー選手は本当に強くて、ぶつかってもびくともしない。筋力の違いなのか、腕一本で押さえられるんです。身体も堅くてラグビー選手みたいで、当たったら痛いですからね」


−−海外の選手とは体格の違いを感じる?

「今年一月のU-22アジアカップでイラクやイランといった中東のチームと対戦したときも、体格の違いを感じました。もっと身体を強くしないといけないですね。ぼくはずっと身体の線が細いと言われていて、意識はしているのですがトレーニングをしても筋肉がつかない部分もある。今もトレーナーといっしょに鍛えています。最近は少しずつ体重も増えてきたんですよ」

 

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(c)GAMBA-OSAKA

ガンバ大阪で結果を残せば、
オリンピックへつながっていく。


−−JリーグやU-21日本代表で海外の選手と対戦して、プレーの違いを感じますか?

「ゴールに向かう姿勢が違います。ほんの少ししか空いていなくても無理矢理シュートを打ってきて、それが入ってしまう。この体勢では打ってこないだろうと思っていても打たれてしまうから、“あと一歩をどれだけ寄せられるか”が大事なんです。それは練習でも気をつけています」


−−ところで、この夏のワールドカップは観ていましたか?

「キャンプやJ3の試合があったので、あんまり観ていないんです。でも、日本戦はしっかりチェックしましたよ」


−−自分が出場するシミュレーションは?

「少しは、しました。世界が注目するあの場所に立ったらどうなるんだろうと考えて、“4年後・8年後にそこに絡んでいたい”という気持ちが強くなりました。ワールドカップにでることは、子どものころからの夢でもありますから。でも、それと同時に“今のままでは全然ダメ”とも感じて、練習でもワールドカップのピッチに立つにはどうすればいいのかを考えるようになりました」


−−4年後のロシアに向けて…。

「その前に2016年のリオオリンピックがあります」


−−オリンピックへの想いは強い?

「一生に一度、出られるかどうかの大会に出場できるチャンスが自分の前にあるなら、そのチャンスはつかみたい。自分の成長のためでもありますし、そこに出場できたら次のワールドカップへの道も開けてくると思っています」


−−ガンバ大阪にもオリンピック出場経験者がいますよね。

「今野選手とはオリンピックの話を何回かしました。予選のむずかしさを教えてくれて、“出場して当然と言われているけど、そんなことは全くない。自分たちのときも危なかった”と話してくれました。そして、“オリンピックには絶対に出たほうがいい”とも言ってくれて、さらに想いが強くなりましたね」


−−先輩の想いにも応えないといけませんね。

「自分の中でオリンピック出場は大きなモチベーションで、選ばれたいと強く願っています。でも、それが簡単でないこともわかっています。ぼくと同じポジションにはいい選手がたくさんいて、ぼくより一歩先を行く選手もいます。誰にも負けたくないですね。そのためにも、チームでの活躍が大切です。試合でいいパフォーマンスを見せて結果を残せば、オリンピックにつながる。だから、今の一番の目標は“ガンバの試合に出場し続ける”ことです!」

 

 

text by Masami URAYAMA