かなえた、セレッソへの夢。
かなえたい、セレッソでの夢。


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セレッソ大阪 小谷祐喜選手

「育成」という言葉が代名詞となったセレッソ大阪。しかし、育成組織全ての選手がプロになれるわけではない。上へ進むことができる者はひと握りだ。その破れた思いを夢への原動力に変え、今年セレッソ大阪へ戻ってきた選手がいる。小谷祐喜選手。8年前、所属していたジュニアユースからユースへの昇格が叶わなかった彼が、高校・大学を経て、今再びセレッソ大阪で目指す夢とは―。

 

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悔しさを原動力に。


−−セレッソ大阪からオファーがきたときはどんな気持ちでしたか?


「ジュニアユース時代に所属していた思い入れの強いクラブなので、すごく嬉しかったです。ユースへの昇格はできなかったのですが、高校・大学でも『もう一度セレッソ大阪に認めてもらいたい』という思いをもってがんばっていました」


−−昇格できなかったとき、すぐに気持ちは切り替えられたんですか?


「全く気持ちの切り替えができませんでした。プロになるためのステップアップとして、ユースに上がることだけを毎日考えていたんです。今までやってきたこと全てを否定された気がしましたし、『もうプロにはなれないのかな』とも思いました。でも高校を選ぶとき、サッカー部が強い高校を自然に志望していたんです。そのとき、この高校で選手権に出場して、もう一度プロを目指すんだという気持ちになりました」


−−進学された関大一高では3年時に選手権に出場し、ベスト4という成績を残しました。練習はいかがでしたか?

「厳しかったですね。“月まで走れ”というスローガンのもと、地球から月までの距離約38万kmを部員全員で走りこむ練習もありました。でもどんなに辛いときも原動力になったのが、ユースに上がれなかったときの悔しさです。今までで一番悔しい経験でしたから、『ここでやらんかったら同じことになる』と自分に言い聞かせて練習していました」


−−その後、進学された関西大学では?

「チームメイトには年代別の代表に呼ばれるような選手が集まっていて、その多くがJリーガーを目指していました。プロになるためには、その中で活躍してスカウトに見てもらう必要があります。『何が何でも試合に出るんだ』という気持ちで取り組んでいました。大学生活の誘惑には目もくれず、他の選手には負けていられないという気持ちで、サッカーのことばかり考えて練習する毎日でした」


−−サッカー一色の大学生活だったんですね。

「自分が心から楽しめるのがサッカーでした。チームメイトも同じ思いをもった選手ばかりでしたし、切磋琢磨しながら成長することができました。それに、これまでぼくは大阪でしかサッカーをしていなかったので、他府県のサッカー事情を聞いたり、チームメイトが昔所属していた他のユースチームの話を聞いたりすることはすごく新鮮でした。刺激になりましたし世界が広がりましたね。充実した大学生活でした」


−−学生時代はセレッソ大阪との接点はあったんですか?

「大学四年生の時、関西ステップアップリーグ※の試合にセレッソの選手として出場させてもらうことがありました。前日に大学の試合があることもあって、二日連続の試合は体力的にもかなり厳しいのですが、ぼくはセレッソに入りたいからめちゃくちゃ気合が入っていて。周りから『おまえ、キモい』って言われていました(笑)。でも“もう一度セレッソに認めてもらいたい”と思っていたぼくにとっては大きなチャンス。『ここで活躍してアピールするんだ』という強い気持ちで挑んでいましたね」
※    関西ステップアップリーグ:サテライトリーグに変わり、関西の若手選手の育成を目的として、2010年に創設された関西サッカー協会主催のリーグ戦。関西Jクラブに加え関西学生選抜チームが参加。また、学生をJクラブの選手として起用することも認められており、プロからの技術向上・教養を学び取る機会を作る場を提供している。


−−その活躍が認められて“セレッソへの夢”が叶った―

「『がんばってきてよかった』と、とりあえずは思いました」


−− “とりあえず”ですか?

「『入るからには入っただけで終わったらあかん』と思いました。もっと成長して確実に結果を出せる選手にならなくては。まだ力不足なのはわかっているので。今も必死です」

 

 

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セレッソ大阪を代表するCBへ。


−−再びセレッソ大阪に戻ってこられて、チームには慣れましたか?

「はい。選手同士の仲が良く、話しやすい雰囲気のチームですから。誕生日にはチームのみんなからスポーツドリンクをぶっかけられてお祝いもしてもらいました(笑)ファンの方々からもプレゼントをいただいて、とても嬉しかったです」


−−扇原貴宏選手・永井龍選手とはジュニアユース時代の同期ですよね。

「仲がいいです。高校・大学時代はずっと連絡をとりあっていたわけではないですが、高校選手権に出場したときはタカ(扇原選手)がメールをくれました」


−−練習ではどのようなことを感じていますか?

「やはりレベルが違います。前線の選手とのマッチアップでは経験したことのない感覚もありますし、守備の先輩方の対応はちょっとしたポジショニングや駆け引きで相手の思うようにさせないなど、すごく勉強になります。全て吸収したいと思っています」


−−先輩から学ぶことも多いんですね。

「先輩方のプレースタイルは、まさにぼくの目標です。同じポジションを争っているにも関わらず、対人での体の寄せ方やタイミングなど、ぼくの特長をより引き立たせるためのアドバイスをもらえることもあります。もちろん、コーチからも多くの指導を受けています。例えば高橋大輔コーチには、経験を踏まえた事例でわかりやすくメンタルトレーニングをしてもらっています。恵まれた環境の中で充実した練習ができていますし、まだまだ成長できると感じています」


−−メンタルの強化については近年、言及されることも増えています。

「Jリーグで活躍している選手を見ていても『その一歩が出るんだ』と思う選手は強い気持ちをもっています。自分もそのレベルに達するためにはメンタルの強さを身につけていきたいと思っています。加えて、気持ちをコントロールする力も必要です。点をいれられたときやミスをしたときはどうしてもダメージを受けてしまいますが、次のプレーでは何もなかったかのように切り替えができる選手でなくてはいけません。波があるDFなんて絶対ダメです。徐々に改善されていると思うのですが、経験を積んでさらに成長していきたいです」


−−では、次に見る小谷選手の夢は?

「サッカーをしている限り、日本代表は目指しています。でもぼくは近い目標を、一つひとつクリアすることで夢へと近づいていく考え方なんです」


−−それでは直近の目標は?

「Jリーグの舞台に立つこと、そして活躍できる選手になることです。ACLのアウェイ広州恒大戦でデビューしたときに、ピッチに立つことや勝つことの喜びを改めて感じました。今はいつチャンスが訪れてもいいように、最高のコンディションを保つことを心掛けています」


−−具体的にはどんなプレーを見てもらいたいですか?

「1対1の勝負です。どんな危ない場面でも粘り強く、体を張った守備でボールを奪い取ることに自信をもっています。そこはぜひ見てほしいですね」


−−目指す選手はいらっしゃいますか?

「ジュニアユースのときにブルーノ・クアドロス選手を見て、『CBでもあれだけ印象に残る選手になれるんだ』と思ったことを覚えています。カバーリングがうまくて、強い統率心をもっていました。ああいう選手になりたいです」


−−ファン・サポーターも期待しています。

「天皇杯のヴィアティン桑名戦とリーグの横浜F・マリノス戦でベンチに入ったのですが、ファン・サポーターからの熱い声援を感じて、この後押しがあれば絶対100%以上の力が出せるなと思ったんです。あの大歓声の中で自分のプレーを見せたいですね。そして、みなさんに認められる活躍をして、『あいつがいたら大丈夫だ』と言ってもらえる選手になりたいです」


−−目標の先にある、小谷選手の夢ですね。

「はい。セレッソ大阪を代表するCBを目指します」

 

Text by Yuri Nakanishi