いよいよ最後の戦い。優勝と全社枠の行方は…


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9月30日(火)大会4日目

舞台は、開会式が行われた上富田町に還ってきた。全国を代表する32チームは、わずか4チームに絞られた。この4チームが、残り2日間の日程を最後まで戦うのだ。

大会4日目、準決勝。今日勝てば地決出場が決まる。優勝に王手がかかる。絶対に負けたくない。照り付ける陽射しの下で、熱い熱い戦いが始まった。

 

上富田スポーツセンター球技場

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JR朝来駅から山手へ、車で5分。緑豊かな風景の中に、上富田スポーツセンターがある。関西リーグ・アルテリーヴォ和歌山のホームゲームも開催されるスタジアムだ。

山間部の地形を利用して棚田状に野球場やグラウンド、テニスコートなどが造られており、本大会では1回戦4試合が多目的グラウンドと球技場の両方を使って行われた。大会クライマックスとなる2日間の舞台は、山肌を削って造られた球技場。ピッチと客席が近く、急斜面を利用して階段状につくられたスタンドからの眺めもいい。

スタジアムに到着すると、国体マスコットのきいちゃんが出迎えてくれた。受付の周囲には物販のブースや休憩のためのテントも用意されている。なでしこJAPANのメンバーのサインを大切に飾った出店もあって、上富田町のサッカーへの温かな思いを感じられた。

 

 

11:00キックオフ:VONDS市原FC(関東/千葉県)vs FC大阪(関西/大阪府)

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ともにJを目指すクラブ同士の対決である。両チームとも今大会のクラブの中では、飛び抜けて選手層が厚い。因縁の対決もある。VONDS市原FCの山根選手はSAGAWA SHIGA FC時代にFC大阪の清水選手や御給選手とチームメイトだった。VONDS市原FCの早川選手、石田選手、濱屋選手はレイソルのジュニアユース所属当時、ヴィッセル神戸ジュニアユースだったFC大阪・紀氏選手と対戦している。サッカーを続ける限り、人生はめぐり会う。時間やカテゴリーは関係ない。

16分、今大会1ゴールをあげているFC大阪四ヶ浦選手のシュートでFC大阪が先制するが、VONDS市原FCは24分と25分に藤牧選手が連続2ゴールですかさず逆転する。反撃に出たいFC大阪だが、VONDS市原FCの堅い守備もありなかなか得点に結びつかない。後半も攻撃を続けるFC大阪は、72分、ついに中村選手のヘディングで同点に追いつく。中村選手も今大会これが2ゴール目だ。その後もFC大阪は攻撃を続けるがVONDS市原FCも耐えて、試合は延長戦に入った。

両チームとも、ここまで3日間を炎天下で戦い続けてきた。選手層が厚いとはいっても、ここまで全試合をフル出場している選手もいる。容赦ない真昼の太陽に晒されながら、それでも集中を切らさないFC大阪は、延長に入った84分に須ノ又選手のゴールで逆転。これが決勝点となり、FC大阪が地決枠の獲得と優勝へ王手をかけた。

 

13:30キックオフ:クラブ・ドラゴンズ(関東/茨城県) vs 三菱重工長崎SC(九州/長崎県)

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大学1年生が中心のクラブ・ドラゴンズ、スターティング・イレブンの平均年齢18.8歳。対する三菱重工長崎SCは平均28.8歳で、22歳から40歳まで幅広い年齢層の選手が活躍するチームだ。中でも最高齢の二人、安倍選手はチームを牽引するキャプテンであり、竹村選手は今年の「長崎がんばらんば国体」の登録選手でもある。

対照的なチーム同士の対決、クラブ・ドラゴンズは持ち前の豊富な運動量と巧みなプレーでゴールを狙うが、三菱重工長崎SCも負けてはいない。互いに気持ちのこもったプレーが続き、スコアレスドローで前半を終えた。しかし後半早々の42分、クラブ・ドラゴンズ守田選手のシュートが決まると、58分FKで金選手が、72分PKで西槙選手がゴールを奪い、3-0でクラブ・ドラゴンズがリードする。三菱重工長崎SCも意地を見せ、77分に井福選手のゴールで1点を返すものの、3-1で試合終了。クラブ・ドラゴンズが明日の決勝戦進出を決めた。

 

 

10月1日(水) 大会5日目

炎天下80分の試合を、負けたら終わりのノックアウトステージを、5日間連続で戦い続けるメンタリティはいったいどんなものなのだろうか。

各地域の代表32チームの全力を賭けた戦いも、今日で終わる。大会最終日、眩しい晴天に恵まれた上富田で、3位決定戦と決勝戦が行われた。地決への残り1枠を賭けて、そして、全国約5,000の社会人チームの頂点を目指して、最後の戦いが始まった。

 

10:00キックオフ

3位決定戦:三菱重工長崎SC(九州/長崎県) vs VONDS市原FC(関東/千葉県)

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地決へ、最後の1枠をめぐる戦いが始まった。

22名の登録選手のうち2名をケガで欠き、20名で大会に臨んだVONDS市原FCだったが、「誰が出ても同じサッカーができる」という強みを活かし、何とかメンバーをやりくりしながら5日間を戦ってきた。一方の三菱重工長崎SCも、スタメン11人のうち5人がここまでフル出場。その中には40歳の安倍選手・竹村選手の名前もある。

両チームとも4日間の疲れをものともしない戦いぶりで、緊張感に満ちた試合が展開する。一瞬たりとも目が離せない息詰まる試合で、61分、ついにスコアが動いた。三菱重工長崎SCゴール前の攻防、VONDS市原FCの宮内選手がこぼれ球をシュート。待望の先制点が入った。しかし、三菱重工長崎SCも最後まで諦めない。中でもキャプテンの阿部選手は、誰よりも走り誰よりも戦い、ピッチでチームを鼓舞し続けた。1点をめぐる激しい攻防はしかし、VONDS市原FCが集中して守り抜き0-1で勝利、地決への出場権を手にした。

試合後のスタンドには、一般社団法人VONDS市原の神山理事の姿があった。おめでとうございますと声をかけると、眩しい笑顔が返ってきた。試合の時とは違う、優しい表情だ。

「全国大会は難しいですね。頑張って、勝てて良かったです。でも、クラブにとってここは通過点にすぎません。目標はJFLなので、次の地域決勝に出て優勝することが大事なんです。これからまた千葉にもどって、地決に向けての準備をしっかりやっていきたい。頑張ります」。

今年、地域リーグ決勝大会の決勝ラウンドは市原市で開催される。市民球団であるVONDS市原FCの地元でのJFL昇格は、地域の人々の願いでもあるのだ。

 

●インタビュー:クラブの大きな財産になる5日間。

3位 VONDS市原FC 西村 卓朗 監督

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今日の一戦、非常に重みのある試合でした。自分一人ではなくて、ここに立てない選手たちや多くの人の期待など、いろいろな想いを背負っている試合です。その想いをしっかり感じてプレーしようと臨みました。

5日間で5試合、プロでやってきた自分にとってはあり得ない過酷な大会です。なかなか経験できないでしょう。でもそれは、選手・スタッフなどクラブを本当にタフに強くさせる大会なんじゃないかと思います。VONDS市原FCは社会人で働きながらの選手がほとんどのチームなので、普段は合宿なんかできないですしミーティングの時間もなかなか取れない。でもこの大会の、準備も含めた7日間に詰め込むことができました。大会を通じて選手の顔付きが変わっていくのがわかりましたし、チームの一体感も出せました。これは本当にクラブにとって大きな財産になります。

この大会には選手の職場の同僚の方々も有給休暇を使って応援に来てくれていました。そういうところで選手たちのモチベーションも高かったと思いますし、来てくれたサポーターの方も喜んでくれたんじゃないかと思います。でも、ここは通過点です。地域決勝大会の決勝ラウンドは市原で開催されるので、そこでしっかり勝ってサポーターに喜んでもらいたい。

VONDS市原FCは、Jリーグを目指しています。そのために、財務、育成、人事体制などの組織づくりや施設整備を進めています。クラブとしてJに行く体制は整ってきている。あとは現場がしっかり結果を出すことです。早く目標に到達できるように頑張ります。

 

 

 

12:30キックオフ

決勝戦:クラブ・ドラゴンズ(関東/茨城県) vs FC大阪(関西/大阪府)

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ナンバー1のプライドを賭けた戦いが始まった。

「試合するたびに、強くなっている」。それが、大会を通してクラブ・ドラゴンズのプレーを見てきた感想だ。シーズンを関東リーグ2部で戦っていたチームが、勝利の波にのって決勝までやってきた。登録メンバー22名の平均年齢が18.9歳という若さは、無尽蔵の運動量で勝ち上がるだけではなく、一試合ごとに経験と自信を積み重ねてきた。一方のFC大阪は、元Jリーガーも所属する経験豊富なチームだ。フィジカルでもクラブ・ドラゴンズを上回る。選手層の厚さを活かし、これまで巧みなローテーションでチームのベストコンディションを維持してきた。この2チームの対戦は、31℃を超える暑さの中でキックオフを迎えた。

両チームとも果敢に攻めてチャンスをつくり、両チームとも集中してしぶとく守った。FC大阪がゲームを巧みにコントロールする中で、大会屈指のブラジル人FWを前半シュート1本に抑えるなどクラブ・ドラゴンズも一歩も引かない戦いぶりだった。しかし53分、FC大阪高橋選手が相手のパスを奪って先制点を決める。さらに、途中出場のFC大阪近藤選手が73分にCKからヘディングシュート、0-2でFC大阪がリードする。クラブ・ドラゴンズも惜しいFKなどチャンスもあったが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

0-2のまま、試合終了の笛が鳴った。それは、この5日間の終わりの笛でもあった。

FC大阪が、全国5,000チームの頂点に立った。

 

●インタビュー:昨年の口惜しさを今年は喜びに変えて。

優勝 FC大阪 森岡 監督

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今大会は、狙いどころをはっきりさせて試合に挑みました。相手をゼロに抑えれば負けることはありません。ディフェンスからしっかりやって攻撃を仕掛ける。でも、絶対勝てるサッカーなんてないと思うんです。本当にやってみないとわからない。その中で選手たちはすごく表現してくれた。それが結果につながったと思います。チームの団結力も勝ち切れた要因です。チームがまとまっていて、誰が出ても同じサッカーができたことは強みだったと思います。

5日間、正直しんどかったです。試合中、頭の中はフル回転している状態でしたから。でも、選手たちが一番しんどかったと思います。5連戦、宿泊して試合することに慣れない選手も少なくありません。ただ、この大会で団結力は一層高まったというのはありますし、5連戦をしっかり戦えた経験は、地決に向けてすごく有効だと思います。

地決は、先に点を取られたらきつい。選手として出場した時(2006・2007年)も、指導者として出た時(2013年)も、それは同じでした。昨年の地決では、先に点を入れられて焦ってしまい、ゲームコントロールができなかった。今年の大会はそこをしっかりやっていけたらと思います。

昨年、地決で勝てなかった口惜しさを、今年は喜びにかえたい。頑張りたいと思います。

 

●インタビュー:1試合1試合、全力で取り組むだけ。

準優勝 クラブ・ドラゴンズ 中島 俊一 監督

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1日1試合というタフな大会を、選手たちは頑張ってやってくれました。試合をするごとに自信を持っていきましたし、そういう意味ですごくいい大会、価値のある大会だったなと感じています。

大学1年生が中心に構成されているチームで、他のチームの方々よりも平均年齢がぐっと若い。そこは有利だったと思います。1試合2試合、勝っていけば他よりも若い分だけフレッシュで動けたかなと。また、うちの大学の特長として良い選手はすぐトップに行けるというのがあります。そういう意味ではモチベーションは高かったと思います。準決勝は監督も見に来られていました。

決勝戦は、Jリーグで活躍された選手など経験豊富な選手が何人もいらっしゃるチームが相手で、うまく試合を運ばれましたしパワー負けもありました。また、選手たちの気持ちで地決が決まってほっとした部分も出たでしょうか。絶対優勝するんだという気持ちがプレーで表現できなかったというのが印象です。ただ、ここまでやってきた選手を責めることはできないし、次に向けてまたしっかりやろうと考えています。

(地域リーグ1部優勝チームが出場する)地決へは、関東リーグ2部という下のカテゴリーからの挑戦者の立場なので、また、1戦1戦大事に戦いたいと思います。今回の大会もそうですけど、1試合1試合全力で取り組むだけです。

 

●全社コラム:応援してくれる人の存在。

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マイクラブを応援するために、全国各地からたくさんの人が和歌山を訪れた。茨城県にある流通経済大学サッカー部のクラブ・ドラゴンズの家族たちもそうだ。「頑張る姿を見せてもらえれば、それだけでうれしい」と、仕事先から直接駆けつけた人や休暇をとって来た人、勝ち進むごとに延泊して全ての試合を見守った人もいた。「それにしても、和歌山は遠かったです」ほとんどの人がそう話していた中で「来やすかった」という人たちがいる。西日本出身の選手たちの家族だ。「関西から茨城県はさすがに遠くて、試合を見に行く機会も減りました」。それだけに、この大会を心から楽しみにしていたそうだ。

大学サッカー部のサードチームであるクラブ・ドラゴンズには、たくさんのファン・サポーターがついているわけではない。けれども、彼らがいつか大勢の人々に応援されるトッププレイヤーになる日まで、家族は、何があっても見守り続けてくれる心強い応援団なのだ。決勝戦の後、選手のひとりがこう言った。「せっかく来てくれたのに、笑顔でありがとうと言えなかった。もっと強くなりたい」。

応援してくれる人の存在が、選手をもっと強くする。

プロリーグではないけれど、今回の大会にも大勢のファン・サポーターが会場を訪れて、精一杯の声援をおくっていた。32チームのうち31チームは悔しい思いをしたけれど、その声は、きっと選手たちに届いている。これからもずっと応援を続けたい。選手たちのために、そして、素晴らしい試合をスタジアムで一緒に体験するために。

 

 

50回全国社会人サッカー選手権大会
(紀の国わかやま国体
2015サッカー競技リハーサル大会)

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決勝
クラブ・ドラゴンズ 0-2 FC大阪
3位決定戦
三菱重工長崎SC 0-1 VONDS市原FC
準決勝
クラブ・ドラゴンズ 3-1 三菱重工長崎SC
VONDS市原FC 2-3 FC大阪
準々決勝
クラブ・ドラゴンズ 1-0 アルテリーヴォ和歌山
奈良クラブ 1(4-5)1 三菱重工長崎SC
アミティエSC 1-2 VONDS市原FC
FC大阪 3-0 松江シティFC
2回戦
クラブ・ドラゴンズ 3-1 FC鈴鹿ランポーレ
アルテリーヴォ和歌山 3(4-3)3 高知UトラスターFC
奈良クラブ 1-0 サウルコス福井
コバルトーレ女川 1-2 三菱重工長崎SC
鹿児島ユナイテッドFCセカンド 0-3 アミティエSC
ラインメール青森FC 0-1 VONDS市原FC
FC大阪 2-0 三菱水島FC
松江シティFC 2-1 FC KOREA
1回戦
クラブ・ドラゴンズ 3-1 札幌蹴球団
レイジェンド滋賀FC 0-2 FC鈴鹿ランポーレ
デッツォーラ島根 1-2 アルテリーヴォ和歌山
東京23FC 1-2 高知UトラスターFC
奈良クラブ 8-0 MD長崎
サウルコス福井 4-1 トヨタ自動車北海道
日立ビルシステム 2-3 コバルトーレ女川
三菱重工長崎SC 1-0 FC刈谷
鹿児島ユナイテッドFCセカンド 3-2 さいたまSC
アミティエSC 2-1 Chukyo univ.FC
ラインメール青森FC 5-1 三宅クラブ
JAPANサッカーカレッジ 1-4 VONDS市原FC
FC大阪 2-0 アイゴッソ高知
新日鐵住金室蘭サッカー部 1-2 三菱水島FC
バンディオンセ加古川 2-3 松江シティFC
矢崎バレンテFC 0(1-4)0 FC KOREA

 

優勝したFC大阪に祝福を。5日間を戦い抜いた4チームに称賛を。参加全32チームに拍手を。そして、大会を支えてくれた和歌山のすべての人々に感謝を。

 

Text by Michio KII & Kaori MAEDA