サポーターとともに喜びを分かち合う、それがセレッソイズムの継承になっていく。


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セレッソ大阪 酒本憲幸選手

昨シーズン、セレッソ大阪はJリーグの話題の中心にいた。そのチームのJ2降格は、Jリーグファンに大きな衝撃を与えたのではないだろうか。明けての新シーズンで待っているのは、J2での過酷な戦い。悔しさを闘志に変え、一年でのJ1昇格を目指す。その強い想いを、セレッソ大阪で長年戦い続け、J2も経験している酒本憲幸選手にうかがった。酒本選手が見る今のセレッソ大阪とは――

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降格の悔しさは、一生忘れない。

 

――改めて昨シーズンを振り返っていただけますか。

「一言では表せません。いろいろな問題がありましたけど、これが原因というのはなかった。グランドでプレーしている選手たちは、みんな立て直そうとしていたけどうまくいかなくて。申し訳ない気持ちでいっぱいだし、J2降格という結果はすごく悔しい。この悔しさは一生忘れられないし、この先に生かしていくと心に刻みました」

 

――そんな中でも収穫はありましたか?

「収穫というより“経験できた”という方がしっくりきます。この経験は次につながると思いますし、つなげないともったいない」

 

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新シーズンを戦う準備はできた。

 

――新シーズンがスタートしました。チームの雰囲気はいかがですか?

「それぞれがオフでしっかりリフレッシュしてきたので、良い状態でスタートしています。串本キャンプにはケガ人が戻ってきたし、ディエゴ(フォルラン選手)も合流した。全員でまとまって、“J2を戦うぞ”という空気になってきましたね」

 

――酒本選手はJ2を経験されています。J1との違いはありますか?

「環境の違いはあります。遠方のチームもありますから移動距離が長くなるし、試合数も多い。それに、ぼくたちがいたときよりJ2のレベルは上がっていて、上位と下位の差も小さくなっていると聞いています。タフな戦いになるでしょうね。でも、どんな環境に置かれてもブレずに自分たちのサッカーをすることに集中していきます」

 

――新シーズンの目標は?

「一年でJ1に昇格することは最低目標。今シーズンは、セレッソの力がこんなものじゃないということを見せないといけないと思っています。そのうえで、アウトゥオリ新監督がキャンプで言っているのは、この先も続いていくセレッソ・サッカーのベースをつくるということ。J1に上がってからも自分たちのサッカーができ、そして優勝争いに絡めるように、ここからがスタートです」

 

――新監督の印象はいかがですか?

「インテリジェンスのある言葉選びが印象的です。例えば、『効果的』と『効率的』など、普段何気なく使ってしまっている言葉の意味の違いを、サッカーを通して説明してくれます。また、練習ではアイデアのある頭を使ったサッカーを求められるので、やっていておもしろい。やりがいも感じています」

 

――良い雰囲気でチームづくりができているようですね。

「監督は始動時から選手たちの課題をしっかりと理解していました。キャンプではその課題の克服を求められるだろうし、ぼく自身もチャレンジして克服していく。いくつになっても“自分はまだまだうまくなれる”と思っているし、それを信じて練習できている今は楽しいですね」

 

――また、今シーズンは茂庭選手など経験値の高い選手が加入しました。

「若い選手と積極的に話をするなど、普段の姿勢からも長くプレーしている選手の経験をチームに伝えてくれています。ぼくも若手の頃は先輩選手の姿を見て、“もっと頑張らなあかん”と思うようになりました。それに、長いシーズンにはいろいろありますから、ベテランの存在はこれからもっと大きくなっていきます。ぼく自身も、練習でみんなが疲れているときに声を出していったりしていますよ」

 

 

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サイドバックは難しくて、おもしろい。

――酒本選手が考えるサイドバックの魅力は?

「攻撃の起点になれるし、決定的なパスを出して得点に直結することもできます。反面、行き過ぎてしまうと失点につながってしまう。バランスが難しいのですが、その難しさがおもしろいし、サイドバックの奥深さでもあります。ぼく自身はアップダウンをもっと多くして、ディフェンス力を上げるのが課題だと感じています」

 

――こだわっているプレーはありますか?

「ボールをつないで、ポゼッションを上げることです。以前、前のポジション(サイドハーフ)でやっていたのですが、そのときに守備陣が簡単にタッチラインの外にボールを出したり、クリアして相手ボールにしてしまったりすることにもったいなさを感じていたんです。だから今は、ボールをつないで簡単に相手に渡さないよう意識してプレーしています。もちろんクリアしたほうがいいこともあるのでバランスが大切ですけど、そこはこだわっていますね」

 

――お手本にしている選手はいますか?

「凄いと思う選手はいっぱいいますが、具体的に意識している選手はいません。サッカーを見ているときは、ポジションにこだわらず攻撃的な選手に目が行きますね。見るだけなら、点の取れる華のある選手が好きなんですよ。対峙するサイドバックはしんどいだろうなぁーと思いつつ見ています(笑)」

 

プレーを楽しめば、セレッソイズムは継承されていく。

――セレッソ大阪では、森島さんに代表されるようなチームの魂“セレッソイズム”が継承されていると感じます。意識はされますか?

「強く意識しているわけではありませんが、セレッソには森島さんに憧れている選手がぼくも含めて多くいます。森島さんが日韓W杯チュニジア戦でゴールを決めたのはぼくが高校3年のときで、ぼくが加入した年には嘉人さん(大久保嘉人選手)が日本代表に初めて招集されました。その後も、代表に選ばれたり、海外に移籍した選手がたくさんいます。そんなすごい選手たちと一緒にプレーできるのですから、少なからず影響は受けますし、どの選手も森島さんたちから続くセレッソの魂を持っているので自然に受け継がれているんだと思う。チームでも、エースナンバーである背番号8の重みや、攻撃的なサッカーというスタイルも継承されています」

 

――セレッソ大阪らしい攻撃サッカーは観ている方も楽しめます。

「観ている方に楽しいと感じてもらえているときは、選手たちも楽しくプレーできているんです。試合に勝つというのが大前提にありますが、自分たちが気持ちよくプレーして、セレッソのサッカーをファンやサポーターと一緒に楽しむ。そして、勝って喜びを分かち合う。そういう試合をもっともっと増やさないといけませんし、そうすることでセレッソイズムが継承されていくのではないかと思っています」

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地元・和歌山のサッカーも気になる。

 

――今シーズンのキャンプは酒本選手の地元である串本からスタートしました。

「今のところ知り合いは、誰一人として来ていませんけどね(笑)」

 

――(笑)。でも、酒本選手は和歌山を代表するサッカー選手です。

「いやいや、駒ちゃん(駒野友一選手)がいます。年齢は駒ちゃんが3つ上ですが、同じ中学だったんですよ。これからは駒ちゃんに和歌山のサッカーを盛り上げてもらわないと」

 

――和歌山のサッカーは気になりますか?

「(関西リーグ1部の)アルテリーヴォ和歌山には、後輩がたくさんいるので気になっています。情報もチェックしていますよ。昨シーズンは永井さん(永井雄一郎選手)が加入して話題になりましたよね。関西リーグにはアルテリーヴォ和歌山のほかにも、イバさん(新井場徹氏)が代表をされているFC TIAMO枚方も所属しています。イバさんの影響で、地域リーグである関西サッカーリーグにも興味を持つようになりましたね」

 

――幅広いサッカーへの興味を持たれているんですね! サッカーの話は尽きませんが、タイムリミットが近づいてきました。最後にファン・サポーターへメッセージをお願いします。

「J1昇格を一年で果たして、J1に上がってもセレッソ旋風を巻き起こせるチームになれるよう頑張っていきますので、応援をよろしくお願いします“…とは絶対に言いません。応援していただけるような選手であり続ける”ってイチロー選手が移籍会見で言っていましたよね。パクリではあるのですが(笑)、みなさんに応援をお願いするのではなく、応援したくなるチームになれるよう今シーズンも戦っていきます!」

 

Text by Yusuke ISHIKAWA