Jリーガーと大学生の公式戦 関西ステップアップリーグ


 

若い選手の育成・強化を目指す関西ステップアップリーグが、2015年で6シーズン目を迎えた。関西学生リーグの選抜選手と関西Jクラブの若手選手が戦う真剣勝負の公式戦だ。今シーズンは、関西学生選抜1チームがJクラブ4チームとH&A方式で対戦するレギュレーション。すでに3月にはガンバ大阪との2試合が行われ、7月19日(日)・8月2日(日)には京都サンガF.C.との試合が予定されている。関西ステップアップリーグの魅力を追った。

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見どころは、若い選手たちの成長と活躍。
ファン・サポーターも、スカウトも注目の戦い。

 

はじめに、2014年の関西ステップアップリーグから2試合をご紹介しよう。

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いぶきの森球技場は雨だった。2014年11月9日(日)、関西学生選抜とヴィッセル神戸の試合が開催された。あいにくの天気にもかかわらずスタンドに訪れた観衆は150人。熱心なヴィッセル神戸のファン・サポーターに混じって、学生の父兄の姿もあった。

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ちょうどJリーグの中断期間中だったこともあり、ヴィッセル神戸は安達亮監督のもとトップチームに名を連ねる選手たちが出場。一方の学生選抜は、前日に関西学生リーグを戦ったばかりである。連戦となる厳しいコンディションだが、選手たちのモチベーションは高い。監督を務める前田雅文氏は大阪学院大学のコーチで、ユニバーシアードやJリーグで活躍した経験もある。

試合は14分にヴィッセル神戸が先制、71分に関西学生選抜の山口一真選手(阪南大)が同点ゴールを決めるも、直後の74分にヴィッセル神戸が追加点を奪うと83分にはPKも獲得し、1-3でヴィッセル神戸が勝利した。

関西学生選抜の前田監督は、試合を振り返って次のように語った。「(追う展開だったので)最後の10分間は前に行かせました。選手たちが前日も45分ないし90分戦っていることを考えると厳しかったかもしれません。それでも、選手たちはタフに戦ってくれました。一人ひとりが頑張ってくれたし、チームとして連動して戦えたと思います」

 

 

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関西学生選抜とガンバ大阪の試合は、ガンバ大阪がリーグ優勝を決めた翌日の2014年12月7日(日)にガンバ大阪第二天然芝グラウンドで行われた。優勝を祝うような冬晴れの朝、凍えるような寒さの中で100人ものファン・サポーターが選手たちに声援をおくっていた。練習を終えたガンバ大阪のアカデミーの選手たちも、食い入るようにピッチを見つめる。他クラブのスカウトも、この試合を見に来ていた。何といっても関西の各大学の有力選手が集まり、プロと対戦するのだ。大学生担当のスカウトにとって、こんなにいい機会はそう多くはない。

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ガンバ大阪・長谷川健太監督のもとで若い選手たちが試合に臨む。メンバーの中には、ガンバ大阪ユースから関西大学を経てトップチームに還ってきた岡崎建哉選手の姿もあった。一方の関西学生選抜の監督は大学の若手コーチの中から選ばれることになっており、この日は近畿大学コーチの尾内伸行氏が指揮を執った。12月11日(木)に始まる全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)を控えているため、インカレ組を除いた中でメンバーを編成。浜本祐介一級審判員の笛で始まった試合は、74分同志社大学の鶴崎光選手と77分桃山学院大学の伊藤圭斗選手のゴールで、関西学生選抜が2-0で勝利した。

 

Jサテライトリーグ開催最終年となった2009年、関西ではJクラブと関西学生選抜チームによる新リーグ構想がスタートした。ちょうど大卒Jリーガーの増加が注目されはじめた時期、Jクラブの若手選手の出場機会と大学生がプロと戦う機会をつくることで、「関西地域の次世代を担うU-23年代の強化・育成」を目指した。2009年は5試合のみの開催だったが、2010年関西ステップアップリーグとして公式戦化し、Jリーグ4クラブと学生選抜2チームのH&A方式で30試合を実施。その後も試行錯誤が続けられ、2014年は学生選抜を1チームに絞り合計5チームが8試合ずつ戦う20試合が行われた。2015年は関西学生選抜がJクラブと対戦する方式に形を変え、年間8試合の真剣勝負を実施する。すでに3月には関西学生選抜とガンバ大阪との試合が実施され、7月・8月には京都サンガとの対戦が予定されている。なお、このような若手の強化・育成を目指すリーグは、関西以外の地域では今のところ開催されていない。

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インタビュー:未来を担う強い選手を、関西から。

stepup_pics_08関西学生サッカー連盟 技術委員長 松本 直也

 

――まず、関西ステップアップリーグはどのようなリーグか教えてください。

「大きな枠組みで言うと、18歳以降の大学年代・オリンピック年代の強化です。そのアプローチとして、関西のJリーグ4クラブと関西学生連盟で公式戦を行うステップアップリーグを2010年にスタートさせました。関西という枠の中で若手選手を育成・発掘し、関西から代表レベルの選手を出していこうというのが目標です」

 

――大学生にとってのメリットは?

「学生リーグでは見られないプレーを経験できますから、得るものは大きいでしょう。プロのスピードやテクニック、厳しいプレッシャーにさらされる中で、どういうプレーを選択していくか。それを経験することでサッカーのレベルが上がりますし、プロと比べて自分のレベルがわかるので次に向けての目標設定が明確になります」

 

――プロと公式戦を戦えるチャンスは、そう多くはありません。

「練習試合と違って真剣勝負、芝生のピッチで戦えるし、審判委員会にも協力していただいています。相手チームの監督・コーチやスタッフの方々、他クラブのスカウトも見に来ますから、プロを目指す選手にとっては絶好のアピールの場になります」

 

――『プロ』が身近になるから、モチベーションも上がりそうです。選手の選抜方法は?

「有力選手を50名程度ピックアップした“ラージグループ”の中から、コンディションやパフォーマンスのいい選手を試合ごとに選抜しています。ラージグループは、学生リーグをずっと見ている学生サッカー連盟の技術委員が中心になって選考しますから、選手にとったら普段の試合も大事になってきます」

 

――リーグがスタートして6年目、成果はいかがでしょう。

「結果は出てきていると思います。関西の大学から全日本学生選抜に選ばれる選手が増えていますし、まだ波はありますがJクラブに入団する選手も増えてきています」

 

――2015年の全日本大学選抜チームでいうと、デンソーカップチャレンジサッカーでは18人中6人が、ユニバーシアードでは20人中8人が関西の選手です。

「私はこれまでユニバーシアードのコーチを務めてきましたが、これだけの人数が関西から選ばれたのは初めてではないでしょうか。もちろん、選手個人や各大学チームの努力の賜物です。でも、ステップアップリーグが関西独自であることを考えると、少なからず選手の強化・育成に貢献できているのではと思います」

 

――では最後に、一般のファン・サポーターにとって、ステップアップリーグの楽しみ方を教えてください。

「伸び盛りの若い選手たちがプレーするリーグです。楽しみ方はいろいろあると思いますよ。将来性のある選手を発見したり、アカデミーで活躍していた選手の成長ぶりを追っていくのも面白いでしょう。学生たちもスポーツ選手ですから、応援してくれる人が多いほどプレーも締まってきます。ぜひ、多くの方に見に来ていただきたい。関西のサッカーを一緒に強くしていきましょう」

 

インタビュー:お互いが競争する中で、成長して欲しい。

stepup_pics_09大阪学院大学 コーチ 前田 雅文

 

――関西学生選抜チームの監督として、2014シーズンは3試合を務められました。

「大学も学年も違う選手たちが集まって試合をするのですが、みんなチームがやろうとしていることにうまく順応してくれていると思います」

 

――選手たちのモチベーションは高そうですね。

「自分たちよりレベルの高いJリーガーと対戦できますし、これまでステップアップリーグで活躍した選手がプロに入った実績もあります。単純に、相手よりいいプレーをしたらチャンスが巡ってくるかもしれない。ステップアップリーグは学生リーグなどの翌日に試合が組まれることもありますが、それでも選手たちは本当にタフに戦っています」

 

――試合に出ているのは、やはりプロを目指す選手が多いのでしょうか?

「みんなプロでやりたいでしょう。せっかく続けてきたサッカーで、一つでも上のところでチャレンジしたいというのは必ずあると思います。そうでなければ、前日の試合で疲れているのに翌日も試合に来たりしません」

 

――監督をされる上で心がけておられることは?

「選手たちのコンディションを考えて最高のパフォーマンスを発揮させるように配慮しています。あとは、勝ちに行くこと。強い相手と対戦したいのはJクラブのチームも同じですから、格上が相手とはいっても拮抗する試合をやっていかなければ、こういう試みは続いていきません」

 

――選手の成長を感じられるところは?

「レベル的なこともそうですが、コミュニケーションの部分が大きいですね。選抜チームでぱっと集まった中で自分のパフォーマンスを発揮するためには、コミュニケーションが必要です。大学チームの中にいると感じにくいことですが、ステップアップリーグを通じてそういう部分を高めることで、デンソーカップチャレンジサッカーやユニバーシアードへとつながっていってくれたらと思います」

 

――前田さんはプロで活躍された経験もお持ちです。選手たちにはどんなアドバイスをされていますか?

「私が大学生と対戦した時は、プロっぽいプレーをされるよりも大学生らしく仕掛けてくる選手がいやでした。スカウトの人も、あら探しをするのではなく選手のいいところを見て『この選手は何かある』というのを感じています。失うものはないのですから、自分たちの良さを活かせるように戦って欲しい。そして、プロも学生もお互いが競争し合う中で伸びていければいいですね」

 

インタビュー:関西の大学生の最高レベルを見る喜び。

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関西学生サッカー連盟・学生幹事 望主 唯久馬

 

 

――まず、『学生幹事』の役割を教えてください。

「関西学生サッカー連盟の学生スタッフで、連盟主催のリーグの運営、夏の全国大会やアウォーズなどを連盟の立場でサポートしています。ステップアップリーグでは、選手の状況把握から当日の試合運営までを行います」

 

――ステップアップリーグの運営で、大変なところは何ですか?

「学生選抜のホームゲームの日は、試合の運営だけではなく会場の設営などもあるので少し大変でしょうか。でも、いちばん気を遣うところはミスがないようにということです。1週間前から監督さんが決めたメンバーの出欠確認を行い、ニュースリリースにも間違いがないように慎重に行います。当たり前のことですが、自分たちのミスで報道の方々に迷惑がかからないように細心の注意を払っています」

 

――これまでずっとリーグを見ていて、いかがですか?

「2014年から選手の選抜方法が変わりました。その時々で選手を選ぶのではなく、ラージグループから選抜する形です。毎回いい選手がいいコンディションでプレーできるように選抜されることで、安定したチームで試合に臨めたと思います」

 

――大変なことも多いと思いますが、遣り甲斐は何でしょう。

「Jリーガーのプレーを間近で見ることができるのと、学生選抜という最高レベルのチームを見れるのは、やはりいちばんの楽しみですね。ぼく自身、高校でサッカーを教えているので、その意味でもとても勉強になります」

 

――最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

「ステップアップリーグは、関西の大学生の最高レベルと若いプロ選手との公式戦です。学生はプロを目指し、プロ選手は次のスタメンを目指し、どちらも貪欲に戦う試合は見ごたえがあります。知らない方も多いリーグですが、観戦は無料ですのでぜひ見に来てください。

 

  • NEXT MACH

 

関西学生選抜 v.s. 京都サンガF.C.

7月19日(日)16:00

8月2日(日)16:00

会場:京都サンガF.C.東城陽グラウンド

 

Photo by HEBU Text  by Michio KII