地域リーグ決勝大会2014 奈良クラブとFC大阪がJFL昇格へ


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9つの地域リーグ王者と全国社会人サッカー選手権大会の上位3組だけが参加できる地域リーグ決勝大会。ここで勝つことができれば、JFLへ昇格できる。

関西リーグDivision1で優勝争いをした奈良クラブとFC大阪は、互いに切磋しながら戦ってきた。関西を代表して地決に挑んだ奈良クラブとFC大阪の戦いを追う。

プロローグ:関西リーグDiv.1第11節 FC大阪vs奈良クラブ

2014年8月30日、関西リーグは天王山を迎えていた。

2014シーズンの関西リーグDiv.1は、2つのクラブが3位以下を引き離してデッドヒートを繰り広げていた。JリーガーやU-20代表経験もあるブラジル人選手を補強し、圧倒的な攻撃力を誇るFC大阪。そして、リーグ最少失点で対戦相手をことごとく完封し、天皇杯ではJ1チームを破る活躍で勢いに乗る奈良クラブ。10節終了時点で、首位FC大阪(勝点22・得点25・失点7)、2位奈良クラブ(勝点21・得点15・失点6)と、勝点差はわずかに1。直接対決となる11節は、まさにリーグ優勝と地決出場が懸かる譲れない一戦となった。舞台は大阪市内の鶴見緑地球技場。1,200人の観衆の中にはJリーグチェアマンの村井満氏の姿もある。キックオフは、真夏の太陽が照り付ける11:30。注目の一戦は、思いがけず波乱の展開となった。

前回の直接対決でスコアレスドローに終わった両チームだが、今回の対戦では前半から試合が動いた。奈良クラブは開始10分で池田選手が先制すると、37分には小野選手、43分に鶴見選手、45分には堤選手が得点し、ハーフタイムまでに4得点を奪う。さらに57分にはオウンゴールで追加点を挙げ、63分には堤選手に再びゴールを奪った。奈良クラブ、大量の6点リードである。無得点のまま終われないFC大阪は、66分に川西選手、75分に岩本選手が得点したものの、2−6でゲームが終了。今季リーグでは大量得点することは1度きりしかなかった奈良クラブが6点をも獲得し、1部昇格後リーグでは無敗だった選手層の厚いFC大阪が大敗を喫するという試合となった。

11節の直接対決を終えた順位は、首位奈良クラブ(勝点24)、2位FC大阪(勝点22)。リーグ戦残り3節を両チームとも勝ち切ったため、最終順位はそのまま変わらず。結果としてこの戦いがリーグ優勝を決めるものとなった。

両チームの監督は、地決終了後のインタビューで共にこの一戦について触れている。

FC大阪・森岡茂監督「大きなターニングポイントとなりました。リーグは本当に難しい。2位でリーグを終えることが本当に悔しかった」

奈良クラブ・中村敦監督「天皇杯でも少しずつ自信を掴み始めていた選手たちが、本当に自信を持ったのはあの一戦でした。リーグ戦で得点力に乏しかったチームがFC大阪を相手に大量に得点できたのは、とても大きな意味があった」

リーグの王者として地決への出場権を得た奈良クラブ。一方、FC大阪は残されたチャンスを掴むべく全社に挑み、リーグ優勝を逃した悔しさを糧に見事優勝。地決への挑戦権を得た。

「阪奈ダービー」と呼ばれるようになったFC大阪と奈良クラブの戦いは、地決でも再び巡ってくることになる。

 

 

一次ラウンド通過へ、地決2014キックオフ!

 

地域リーグ決勝大会は、一次ラウンドと決勝ラウンドがある。各地域リーグの優勝チームと全社上位3クラブの計12チームが3つのグループに分かれてセントラル方式で戦う一次ラウンド。各グループの首位となるチーム3組と全グループの2位の中で成績最上位のチーム、合計4チームが決勝ラウンドへと駒を進めることができる。

順位は勝点をもって決められる。試合時間内での勝者には勝点3。90分間の試合で勝敗がつかない場合は即PKとなり、PK勝者には勝点2、PK敗者には勝点1が与えられる。同じ勝点だった場合は得失点差が高いチーム、それも同じ場合は総得点や当該チームの戦績・PK戦の得失点差・反則ポイント・抽選の順により順位が決定される。

2014年の昇格枠は2つ。決勝ラウンド進出をかけ、熱い戦いが幕を開ける。

 

<11月7日〜9日 1次ラウンド 参加チーム>

 

グループA:ひたちなか市総合運動公園陸上競技場(茨城県)

FC大阪(全社1位/関西リーグ1部2位/大阪)、浦安SC(関東リーグ/千葉)、FCガンジュ岩手(東北リーグ/岩手)、十勝フェアスカイFC(北海道リーグ/北海道)

 

グループB:富士北麓公園陸上競技場(山梨県)

VONDS市原FC(全社3位/関東リーグ1部2位/千葉)、新日鐵住金大分(九州リーグ/大分)、高知UトラスターFC(四国リーグ/高知)、奈良クラブ(関西リーグ/奈良)

 

グループC:下関市乃木浜総合運動公園多目的グラウンドB(山口県)

サウルコス福井(北信越リーグ/福井)、FC鈴鹿ランポーレ(東海リーグ/三重)、クラブ・ドラゴンズ(全社2位/関東リーグ2部2位/茨城)、松江シティFC(中国リーグ/島根)

 

 

<グループAFC大阪>

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グループAに入ったFC大阪は、‘14シーズンの関西リーグでは総得点が最も多いチームだった。1次ラウンドの初戦は、開始18分で浦安SCに先制を許す展開となった。全社でのインタビューで「地決は、先に点を取られたらきつい」と話していた森岡監督だったが、FC大阪はこの展開に焦ることなく逆転勝利を納め、勢いに乗る。

2日目、十勝フェアスカイFCとのゲームでは、24分、塚田選手のヘディングシュートで先制。前日の疲れもあってか前半はシュートチャンスも少なくこの1点のみにとどまったが、後半に入ると本来のFC大阪らしさを取り戻し、前半の倍以上のチャンスを作り出す。62分には再び塚田選手が右足でゴールを決め、その2分後には濱上選手のシュートが相手DFに当たりオウンゴールとなって得点。83分と89分には須ノ又選手がゴールを決め、5−0の完封勝利を納めた。

さらに3日目のFCガンジュ岩手戦も4得点で勝利。関西リーグや全社でも見せていた高い得点力で、1次ラウンドの全3試合で合計13得点を挙げ、グループリーグ全勝。昨年は叶わなかった決勝ラウンド進出を決めた。

 

2014年11月7日10:45 FC大阪 4-1 浦安SC

2014年11月8日10:45 FC大阪 5-0 十勝フェアスカイFC

2014年11月9日10:45 FC大阪 4-2 FCガンジュ岩手

 

<グループB:奈良クラブ>

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グループBに入った奈良クラブは、‘14シーズンの関西リーグでは総失点が最も少ないチームだった。1日目・2日目共に失点することなく勝利し、1次ラウンド最終日のVONDS市原FCとの対戦を迎える。

決勝ラウンドが開催される千葉県市原市はVONDS市原FCのホームタウンということもあり、ここまで1勝1敗でグループ2位のVONDS市原FCも譲れない戦いになる。

前半はどちらのチームもシュートを撃たせない攻防が続いた。65分、その均衡が破られる。奈良クラブ・野本選手の左サイドからのCKに頭を合わせたのは馬場選手。地面に叩きつけられたそのボールはGKの一歩手前でバウンドし、ゴール右上の端へと吸い込まれた。その後、1点を返したいVONDS市原FCは猛攻をしかける。全社でもFC大阪のフィリピーニョ選手と並んで得点王だった藤牧選手を中心に前半の3倍にもなるシュートを放つが、奈良クラブは1点を守りきり勝利を納めた。

全てのゲームに無失点で勝利した奈良クラブが1次ラウンドを突破した。

 

2014年11月7日13:30 新日鐵住金大分 0-4 奈良クラブ

2014年11月8日13:30 高知UトラスターFC 0-3 奈良クラブ

2014年11月9日10:45 VONDS市原FC 0-1 奈良クラブ

 

<グループC:サウルコス福井/ワイルドカード:クラブ・ドラゴンズ>

 

グループCは混戦となった。サウルコス福井は、初日に勝利するものの2日目にはクラブ・ドラゴンズに敗戦。しかし、過去2年1次ラウンドで敗退した悔しさを知るこのチームは、最終日には5−0の完封試合で昇格への強い想いを表した。勝点6は他のチームと並ぶ可能性はあるが、得失点差+5で大きくリードしている。1次ラウンド突破の可能性が強くなったものの確定ではなく、その後に行なわれる各会場の試合結果を見守ることになった。

グループCの首位と全グループの2位抜けのチーム(ワイルドカード)は、1次ラウンドの最後となる9日の13:30キックオフの全会場の試合で決まることになる。浦安SC(グループA)、新日鐵住金大分(グループB)、クラブ・ドラゴンズとFC鈴鹿ランポーレ(グループC)この4組に「勝てば決勝ラウンド進出」の可能性があった。得失点差さえ並ぶような試合展開に、ファン・サポーターは各会場で手に汗を握りながら自チームを応援しつつ、インターネットの速報で他会場の試合経過を追う。決定的になったのは試合終了まで10分を切ってからだった。81分・83分、続けざまにゴールを奪ったクラブ・ドラゴンズが得失点差+3に。試合に勝利し勝点は並んだものの、浦安SCの得失点差は+1、新日鐵住金大分は±0だった。

この結果により、グループCの1位通過はサウルコス福井となった。全グループ2位の中で最も得失点差が高かった同グループのクラブ・ドラゴンズと共に、決勝ラウンドへの切符を手に入れた。

 

決勝ラウンドまであと数日となった11月19日、JリーグはJFLで年間4位の成績だったレノファ山口が2015年よりJ3へ入会することを正式に承認した。これを受け、JFLへの昇格枠は3つになる。上位2チームは自動昇格、3チーム目は入会を希望していない十勝フェアスカイFCと新日鐵住金大分以外の地決参加チームから戦績を基に選ばれることになった。

確実に昇格できるのは優勝と準優勝であることに変わりはない。FC大阪、奈良クラブ、サウルコス福井、クラブ・ドラゴンズの4チームが決勝ラウンドへと挑む。

 

 

決勝ラウンド 昇格をかけた最後の3日間

 

<11月22日〜24日 決勝ラウンド 出場チーム>

 

グループA首位:FC大阪(全社1位/関西リーグ1部2位/大阪)

グループB首位:奈良クラブ(関西リーグ/奈良)

グループC首位:サウルコス福井(北信越リーグ/福井)

全グループ2位枠:クラブ・ドラゴンズ(全社2位/関東リーグ2部2位/茨城)

 

2年連続出場となったグループAのFC大阪は、1次ラウンドのみで13得点も挙げる高い得点力で全勝し首位通過。グループBの奈良クラブは、2011年以来2回目の出場となった今大会の1次ラウンド全ての試合を完封試合にしてきた。グループCのサウルコス福井は、2012年から毎年地決に挑み、3年目の今大会で決勝ラウンドにたどり着いた。決勝ラウンドの地へ初めて足を踏み入れることになったFC大阪・奈良クラブ・サウルコス福井は、Jリーグ入りを目標として掲げている。Jリーグに参入するためには、まず今よりも1つ上のカテゴリーであるJFLに昇格することが必須だ。

そして今大会に唯一参加した学生チームのクラブ・ドラゴンズは、流通経済大学サッカー部内では3番手の位置づけとなる1年生を中心としたチームである。2005年から2010年まで部内のセカンドチームである流通経済大学FC(現在は関東リーグ1部に登録)がJFLで戦っていたものの、降格。関東リーグ2部に籍を置くサードチームがJFL復帰を狙う。

どのチームもJFL昇格を目指し、ここまでたどり着いた。なんとしても今ここで掴みたい昇格。一歩たりとも譲ることのできない最後の戦いの幕がいよいよ切って落とされる。

 

 

決勝ラウンド 1日目

 

FC大阪vs奈良クラブ>

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地決・決勝ラウンドでの1戦目は阪奈ダービー、FC大阪vs奈良クラブという組み合わせとなった。どちらのチームも1次ラウンドは全勝。関西リーグの優勝争いの分け目となった鶴見緑地の一戦より、およそ3ヶ月ぶりの対戦である。あの時と同じようにこの一戦が何かを左右するかもしれない…そんな期待を持って、スタンドでは多くの観衆が見守る。サポーターからは、鶴見緑地の一戦に触れるゲームフラッグも掲げられた。

張りつめた空気の中FC大阪ボールでキックオフされた試合は、開始わずか4分で動く。奈良クラブ・馬場悠選手がシュートして弾かれたボールを堤選手がシュートし先制。FC大阪は冷静さを欠かずにチャンスを伺い、32分にGKの弾いたボールを四ヶ浦選手が右足でゴールに流し込み同点に追いつく。1−1で折り返したゲームは、61分に再び動く。松本山雅FCからFC大阪にレンタル移籍中の中村選手の上げたクロスをゴール前で塚田選手が折り返し、四ヶ浦選手が左足でシュートを放った。71分にキャプテンの伊澤選手に変えて岡山選手を投入していた奈良クラブは、83分に岡山選手からのボールを受けた野本選手が強烈なミドルシュートを放ち、同点に。両者譲らず進められたダービーマッチは、90分での勝敗がつかなかった。

 

PKにて勝点3を分け合うことになった両者。奈良クラブが勝点2、FC大阪が勝点1となった。

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続くサウルコス福井とクラブ・ドラゴンズの戦いもまた、PKまでもつれ込む展開となった。PKを制したクラブ・ドラゴンズは勝点2、サウルコス福井は勝点1を得る。

一次ラウンドでは90分で勝負がつかない試合は1つもなかったものの、決勝ラウンドは2試合ともが90分で決着がつかず、わずかな勝点差で初日を終えた。

 

1位:奈良クラブ 勝点2 得点2 失点2 得失点差±0

2位:クラブ・ドラゴンズ 勝点2 得点1 失点1 得失点差±0

3位:FC大阪 勝点1 得点2 失点2 得失点差±0

4位:サウルコス福井 勝点1 得点1 失点1 得失点差±0

 

2日目は、勝点が同じチーム同士が対戦する。まだどのチームも手が届く場所に昇格がある。明日の勝敗と得失点差が3日目に大きく影響することは間違いない。

 

 

決勝ラウンド 2日目

 

FC大阪vsサウルコス福井〉

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互いに思う通りに試合を進めさせぬようにしていた序盤だったが、36分、ゲームは動く。前日の奈良クラブ戦で負傷し頭にテーピングを施して出場していた清水選手が起点となり、塚田選手が先制点を奪う。1−0のまま折り返した後半開始直後、再び塚田選手がヘディングシュートで得点。55分には途中出場していたサウルコス福井の畦地選手が1点を返し、さらに追いつこうと攻撃を繰り返す。82分、その攻撃の一瞬のミスを見逃さずにインターセプトしたのはFC大阪の川西選手。ハーフライン付近からドリブルで相手GKをもかわしてボールを運び、シュートを放ち追加点を挙げる。3−1で試合は終了、FC大阪が勝点3を得た。

 

〈奈良クラブvsクラブ・ドラゴンズ〉

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後に中村監督が「みんな前日の疲れなんか残っていないとは言っていたけれど、昨日のFC大阪戦が相当きつかったんだなと感じた」と話した前半は、シュートこそ数多く打たせないものの、自分たちも思うように得点に結びつく攻撃ができなかった奈良クラブ。前半終了間際の43分、クラブ・ドラゴンズに与えてしまった直接FKのチャンスを星野選手に決められ、失点。0−1で折り返した55分、奈良クラブの堤選手がゴールネットを揺らし、同点に追いつく。さらに2分後には馬場選手からのクロスに頭を合わせた小野選手が追加点を奪い、奈良クラブが逆転勝利。2−1でゲームを終えた。

 

 

2日目は2戦とも90分で勝敗がつき、勝点に開きがでた。

 

1位:奈良クラブ 勝点5 得点4 失点3 得失点差+1

2位:FC大阪 勝点4 得点5 失点3 得失点差+2

3位:クラブ・ドラゴンズ 勝点2 得点2 失点3 得失点差−1

4位:サウルコス福井 勝点1 得点2 失点4 得失点差−2

 

2日目の結果により、2位以上になることが確定した奈良クラブは1歩先にJFL昇格を勝ち取る。昇格を喜ぶスタンドからの声を、岡山選手は「喜ぶのはまだ早いで、優勝するんやから!」と制した。(その後しばらくして、小声で「ごめーん、もう昇格が決まったってことをちゃんと理解してなかったわ…」と再びスタンドに声をかけに行ったが)

残された試合はあと1つ。その他のチームにも、JFLへの自動昇格の可能性がまだある。それぞれに残された試合はあと1つ。最後の90分が、運命を分かつ。

 

 

決勝ラウンド 3日目

 

FC大阪vsクラブ・ドラゴンズ〉

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最終日の1戦目は、2ヶ月ほど前に行なわれた全社の決勝と同じ巡り合わせとなった。FC大阪は勝点1以上を得られれば、2位以内に入ることができる。クラブ・ドラゴンズにとっては、勝つことが必須だ。

FC大阪は14分、主将の岩本選手がヘディングシュートで先制。全社の際はそのまま抑えられた感もあったクラブ・ドラゴンズだったが、失点したわずか5分後に西槇選手が1点を返し、2ヶ月ほどの間にチームとして成長してきたことを垣間見せた。1−1のまま折り返し、お互いに譲らぬ展開だった76分、高橋選手からのパスを川西選手が折り返し、須ノ又選手がシュート。これが決勝点となりFC大阪は2−1で勝利し、2位以内に入ることが確定。JFL昇格を掴み獲った。

 

 

〈奈良クラブvsサウルコス福井〉

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昨日すでに昇格を決めている奈良クラブ。FC大阪の勝点7を越えて優勝するためには、勝点3を得るしかない。一方、サウルコス福井はこの段階で自動昇格の2位以内に入る可能性は消滅していた。しかし昇格3チーム目は戦績を基に決定されるため、引き分け以上にして3位につけることで、昇格の可能性は残される。

拮抗していた試合だったが33分、ペナルティエリアでの守備でサウルコス福井にレッドカードが出された。奈良クラブの瀬里選手がPKを蹴るものの、サウルコス福井のGK伊藤選手はボールを弾く。それを奈良クラブ・稲森選手が拾い、最後は再び瀬里選手がゴールへと蹴り込み先制点を得る。前半はそのまま折り返したものの、数的有利となっていた奈良クラブは後半さらに追加点を重ねる。67分には馬場選手、74分に小野選手、84分と86分には交代出場して10分も経っていなかった橋垣戸選手が2ゴールを挙げた。終了間際の90分、サウルコス福井の畦地選手が1点を返すものの、残された時間はあまりにも短く、大きく離されたスコアに追いつくことは叶わなかった。5−1で奈良クラブが勝利し、今大会のチャンピオンとなった。

 

 

決勝ラウンドの3日間を終えた結果、下記の通り順位が決まった。

 

優勝:奈良クラブ 勝点8 得点9 失点4 得失点差+5

準優勝:FC大阪 勝点7 得点7 失点4 得失点差+3

3位:クラブ・ドラゴンズ 勝点2 得点3 失点5 得失点差−2

4位:サウルコス福井 勝点1 得点3 失点9 得失点差−6

 

関西を代表した奈良クラブと全社王者のFC大阪が、2チーム揃ってJFL昇格を勝ち得た。関西リーグからのJFL昇格は、2007年にMIOびわこ滋賀(当時はMI-OびわこKusatsu)が昇格して以来、7年ぶりのことである。

 

 

FC大阪 森岡茂監督

「‘14年は関西リーグ一部に所属する学生以外のチームは全てJリーグを目標に掲げていました。関西が盛り上がってきている分、難しいリーグ戦でしたね。2位で終えたことが、本当に悔しかった。

7年前、選手として出場していたこの大会の最終日、引き分けでも良かった試合で負けてしまいました。その経験があったからこそ、選手たちには勝って終えようと話すことができました。90分走り続けることができるメンバーを軸に戦いましたが、交代しても質が落ちない選手層の厚さは強みだと感じました。

遠いところまで駆けつけてくださったファン・サポーターの声は、私たちに届いていました。本当にうれしいです、有り難うございました。

大阪には他にJクラブもありますので、いつか越えることを目指しがんばっていきます」

 

奈良クラブ 中村敦監督

「‘14シーズンは、まず守備を徹底するところから始めました。守備ができるようになってきたリーグ前期の最終戦で多く得点できたこと、天皇杯でJクラブに勝てたことなどで、選手たちが少しずつ自信を積み上げていけたと感じています。天皇杯の3回戦でジュビロ磐田に敗戦した後は、選手たち自身が何が足りないか自覚しながら練習に取り組めたので、そこがチームとして強くなれた要因の1つかな、と思います。

シーズンの始めは苦しい試合もあって不安にさせただろうと思いますが、それでも辛抱強く応援してくれるファン・サポーターがいたからこそ、選手はしんどい時にも走り続けることができました。私たちだけではきっと昇格できなかったでしょう。本当に感謝しています。

奈良にスポーツ文化を根付かせてゆく起爆剤になれればと考えているので、さらに上を目指してゆきます」

 

3組目の昇格は、2014年12月10日に発表された。3位でフィニッシュしていたクラブ・ドラゴンズが「流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎」と名称変更し、JFL復帰を叶えた。ここで若い選手たちが経験を積んで成長し、優秀なプレイヤーとなって巣立っていくことにきっとなることだろう。

 

最後になったが、4位となったサウルコス福井にもリスペクトの意を表したい。決勝ラウンドの最終日、自動昇格枠に入れる可能性は消滅していたにも関わらず、チームとファン・サポーターは共に最後まで戦い抜いた。10人で残り60分を戦うことになりゲームの主導権を握ることが難しい非常に不利な状況だった中、試合終了間際に畦地選手が奪った1つのゴールは、試合終了のホイッスルが鳴るまで諦めることがなかったチームを象徴する得点だった。そして同時に、チームが決して簡単に引き下がることなく次のシーズンも戦うという意志を示してくれたように感じている。この辛く苦しい経験が、チームをさらに強いものとしてくれることを心から願う。

 

サウルコス福井をはじめ、地決に出場したチーム、また地決に出場できなかったチーム全てが、また次の地決を目指して新たなシーズンをスタートする。悔しい想いをしたたくさんのチームたちがさらに逞しくなって、JFL昇格に向けてのこの決戦でまた多くのドラマを生むことだろう。

 

 

*地決コラム①*

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塚田選手は、大阪府リーグ時代からFC大阪に在籍している唯一の選手だ。今でこそ地域リーグの中でも屈指の戦力を誇るチームとなっていたが、関西リーグにさえ昇格できない辛い時期もチームと共に戦ってきた。その分、昇格への想いも強く、それがプレーとゴール数に現れる。6試合中4試合で得点を挙げ、今大会最多となる合計7ゴールを奪った。その塚田選手は、最終日の決勝点後に交代でベンチに戻るなり、試合終了を待たずして大粒の涙をこぼした。「長い間、森岡監督たちと吉澤会長たちとうれしいことも苦しいことも共有してきました。地域リーグよりも高いカテゴリーでの経験がある選手も増えてきている中で、ぼく自身はそういう経験もないし若くもない。だから、昇格できることが本当にうれしかったんです。試合中に泣くのはよくないことだとわかっていましたが、いろんな想いを抑えられませんでした」と、その時の気持ちを話してくれた。今大会3点以上挙げた選手の中で30歳を越えていたのは、32歳の塚田選手ただ1人である。

 

*地決コラム②*

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奈良クラブ内では最も多い4得点を挙げた小野選手。その後ろに見える大きなダンマクは、この決勝ラウンドのために1人の奈良クラブサポーターが準備した。一次ラウンドが終わってからこのダンマクの作成を決めたので、千葉県に直接発送してもらうことでギリギリ間に合わせたという。このダンマクを作成したサポーターは「選手たちがいつもがんばってくれているから、自分たちもがんばれる。何かお返しをしたいと思ったんです」と話してくれた。選手たちへの感謝の気持ちが詰まった鮮やかな大ダンマクは、決勝ラウンド初日にお披露目された際、選手たちのみならず多くの観衆を驚かせた。

ダンマクに限らず、奈良クラブの多くのファン・サポーターが一次ラウンド・決勝ラウンド共に会場に足を運び、純粋に応援するという行為自体を楽しんでいたことはとても印象深い。関西以外のファンも混じっていて、「今日は本当に楽しかった。JFLになるとまた近くで一緒に試合が観られると思うと、とてもうれしい」と言っていた。

試合結果の情報はどこにいてもすぐに手に入る時代になった。けれども、その場の雰囲気やたくさんの人と分かち合える時間や気持ちなど、実際にスタジアムに足を運ばなければわからないこともたくさんある。仕事をしながらでも日々練習に励み、試合でも懸命に走る姿を選手たちに見せてもらうことで、観ている側も明日もまたがんばろうと思わせてもらえるかもしれない。新しい友人ができるかもしれない。スタジアムには、試合を観る以外にも楽しみ方はいくらでもある。日頃あまりスタジアムに足を運ばない人たちにも、ぜひ生観戦する楽しみを知ってもらいたい。

 

 

エピローグ:KSLカップ準決勝 奈良クラブvsFC大阪

 

2014年12月14日、KSLカップ準決勝で今年最後の「阪奈ダービー」がもう一度めぐってきた。関西リーグ優勝・地決優勝に加えて3つ目の優勝を狙う奈良クラブと、勝点わずか1差で地決優勝を逃したFC大阪、一歩たりとも譲らない熱い戦いとなる。

 

‘14シーズンのこれまでの3度の阪奈ダービーは、互いに無得点だった関西リーグ第4節を除く2試合で、開始10分以内に奈良クラブが先制点を挙げてきた。同じことを繰り返すわけにはいかないFC大阪は、相手にシュートチャンスを作らせない。一方の奈良クラブも、この1年で守備に強いチームになったことはリーグ戦・地決でも証明してきた。簡単に得点させぬ緊張感を保ったまま、試合時間が経過してゆく。

37分、試合が動いた。右サイドでボールを持ったFC大阪・塚田選手に奈良クラブの守備陣が引きつけられたことで、FC大阪・清水選手が左サイドで完全にフリーに。パスを受けた清水選手は迷うことなくシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。FC大阪にとって、重みのある先制点を得た。0−1のまま折り返した後半、追いつきたい奈良クラブとさらに追加点を重ねたいFC大阪は、互いに攻撃をしかけるが相手の守備に阻まれる展開が続いた。このままFC大阪が逃げ切るかと思った86分、奈良クラブ・堤選手が同点に追いつくゴールを奪う。またしても勝敗がつかないまま90分のゲームが終了し、PK戦で決着をつけることとなる。PKは奈良クラブ4−1FC大阪となり、5人のキッカーが蹴り終えることなく終了した。奈良クラブは阪奈ダービーの勝者となり、2014年シーズン中のダービー4戦は、奈良クラブの3勝1分となった。

決勝戦へ駒を進めた奈良クラブは、バンディオンセ加古川を1−0で下し、KSLカップ優勝。3位決定戦に進んだFC大阪は、レイジェンド滋賀FCに4−3で勝利し3位となった。

 

FC大阪と奈良クラブのダービーは、共に昇格したJFLに舞台を移し‘15シーズンも続く。

 

Text by Kaori MAEDA