【展覧会】「泰山タイル展 一枚のタイルがつなぐ、縁。」モダン建築に愛された幻の美術タイル、時代を超えた魅力に迫る。

京セラ美術館の旧エントランスフロア、大阪綿業会館のタイルタペストリー、地下鉄本町駅のタイル壁、そして1928ビルのカフェの腰壁…。「そのタイル、見たことがある」という方もきっとおられるでしょう。

「泰山タイル」は、日本の近代洋風建築などで愛用された美術タイル。1917年から1973年にかけて生産されていたもので、一つひとつ丹念に手作りされた「唯一無二」の独特の趣が、建築家をはじめ人々を魅了しました。

時代が移り変わり、モダン建築の多くが建て替えられ、泰山タイルもその多くが失われてしまった中、製陶所ゆかりの人々や愛好家たちの手によって奇跡的に集められたことで今回の展覧会が実現しました。場所は、京都市登録有形文化財の1928ビル「同時代ギャラリー」。レトロモダンな建物を舞台に、泰山タイルの世界に浸ってみませんか。

 

「泰山タイル」を堪能できる、世界初の展覧会。

 

京都で陶磁器を学び常滑で経験を積んだ池田泰山が1917年に開いた「泰山製陶所」。そこで作られたタイルや立体物を公開するのが今回の展覧会です。とはいえこの泰山タイル、一つひとつ手作りするので生産数が限られているうえ、時代とともに多くが失われてほとんど残っていません。今回の展覧会では、池田泰山の末裔であり集成モザイクタイル作家の池田泰佑氏をはじめ、泰山タイル愛好家でゆんたびグルメツアーズ代表の柏原卓之氏、そして、かつて泰山製陶所と取引があり展覧会を主催する中村タイル株式会社のコレクションを中心に、現存する貴重な泰山タイルおよそ1000枚、立体物などおよそ30点が公開されます。また、今回の展覧会に合わせて制作された「泰山タイル公式ウェブサイト」公開記念として、7月1日には池田泰佑氏・柏原卓之氏によるギャラリートーク&パーティも開催されます(予約制)。

泰山タイルの特徴は、清水焼の製法を応用し、手作りによる工芸品の深い趣を表現していること。ぽってりと塗られた釉薬は窯の温度の微妙な違いで多彩に変化し、独特の雅味を醸し出します。釉彩陶片をはめ合わせる「集成モザイク」の技法は実用新案を取得。タイルの裏に製陶所の刻印が押されているのも特徴のひとつです。展覧会では、泰山製陶所の歴史とともにタイルやオブジェなどを紹介するほか、実際に泰山タイルを触ったり、磁石を使って自分なりの「泰山タイル壁」をデザインすることもできるのだとか。タイル愛好家はもちろん、レトロ建築ファンやDIYタイルにハマっている人にも見逃せないイベントです。

「一人でも多くの方に、泰山タイルの魅力を知っていただきたい」と語るのは、主催の令和泰山運営事務局長で中村タイル株式会社の嵯峨広造さん。「弊社ではタイルを使ったワークショップなどを開催していて、泰山タイルのイベントもすでに何度か開催しました。そこで気づいたのは、参加される方の泰山タイル愛の強さですね。そういった方々の思いにもっと応えたいし、もっと多くの方々に泰山タイルの魅力を知っていただきたい。だから、選りすぐりのコレクションを展示するとともに、体験コーナーやギャラリートークなど、今ここでしか味わえない展覧会にしたいと思いました」。

展覧会では「泰山タイル」そのものだけではなく、集成モザイクによる作品も展示されています。
中村タイル㈱で開催された泰山タイルのワークショップの様子。マグネットを使って泰山タイルを張り合わせる体験会は、今回の展覧会でも実施されます。

 

「一枚のタイルがつなぐ、縁」。出会った奇跡を未来へと残したい。

 

なぜ、このような魅力的な展覧会が実現できたのでしょうか。主催する中村タイル株式会社の中村祐幸社長にお話をお伺いしました。

「もともと弊社は泰山製陶所と取引があり、弊社会長は泰山製陶所二代目の池田侊佑氏と交友がありました。その関係で、倉庫には数多くの泰山タイルが大切に保管されていたんです。それが日の目を見ることになったのが、つい2年ほど前の弊社ECサイト立ち上げでした。これをきっかけに保有していた泰山タイルをSNSにアップしたところ、予想以上の反響があり、さまざまな人とつながることになったんです。多くのファンの方から問合せいただいたほか、熱烈な愛好家でおられる柏原卓之さんとのご縁もありました。また、1928ビルの同時代ギャラリーさんともつながりができ、池田泰佑先生と一緒にイベントを開催しましょうという運びになりました」。

中村タイル株式会社はタイルの卸・工事などを行う大阪の老舗企業です。タイル作家によるワークショップも人気のほか、磁石を使ったタイルなど暮らしの中で気軽に楽しめるタイル商品も開発。最近は工事で余ったタイルの小売りやイベントが、SDGsの取組みとして注目されています。

「泰山タイルはもう製造されていない幻のタイルですが、今でも熱烈な愛好家が絶えません。その一方で、泰山タイルの魅力や伝統は体系的に伝えられてはおらず、このままでは時代の中で消え去ってしまいます。そこで弊社では、池田泰佑先生の監修のもと泰山タイルの公式ウェブサイトも制作しています。今年7月1日にアップしますので、そちらもぜひご覧ください」。

修正モザイクタイル

泰山製陶所の創業者、池田泰山(1891年~1950年)

 

泰山タイル展 一枚のタイルがつなぐ、縁。

期間:2023年6月27日(火)~7月2日(日)
開廊時間:12:00~19:00(最終日は17:00まで)
※7月1日15:00~16:00はギャラリートーク参加者のみの観覧になります。
会場:1928ビル2階「同時代ギャラリー」
住所:京都市中京区三条通御幸町東入弁慶石町56番地
観覧料:当日1,000円(18歳未満無料)/前売り900円(令和泰山オリジナル缶バッジ付)
主催:令和泰山運営事務局、中村タイル株式会社
共催:同時代ギャラリー
協力:泰山製陶所、泰山タイルの会、ゆんたびグルメツアーズ

 

泰山タイル公式ウェブサイト公開記念「ギャラリートーク&パーティ」

日時:2023年7月1日(土)
会場:同時代ギャラリー(パーティは1928ビル地下「カフェ・アンデパンダン」)
ギャラリートーク:午前の部11:00~12:00、午後の部15:00~16:00
パーティ:19:00~21:00
参加費:6,600円(ギャラリートーク、パーティ飲食費等込)

 

前売り券、記念パーティのご予約は、中村タイルオンラインショップ https://nakamuratile.shop/
※缶バッジ付前売り券は各日限定50名様、7月1日は当日券のみとなります。
※前売り券・記念パーティとも数量限定につき、売り切れの場合はご容赦ください。

 

お問合せ:06-6531-7263(中村タイル・代表)
ウェブサイト:https://nakamuratile.co.jp/
泰山タイル公式ウェブサイト:https://taizantile.com/ ※7月1日OPEN

 

 

 

 

Michio Kii

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