3000年以上にわたって繁栄を極めた古代エジプト文明。その圧倒的な歴史の厚みと、現代のわたしたちにも通じる人々の息遣いを体感できる展覧会「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が、あべのハルカス美術館で開催されています(〜6月14日)。
世界有数の古代エジプト・コレクションを誇るブルックリン博物館の名品から、選りすぐりの約150点が来日。「日常生活」「王権」「葬送文化」という3つの視点で構成され、古代エジプトの人々の暮らしや美意識、そして深い死生観を多角的に紹介しています。
人々の暮らしから見えてくる、古代エジプトのリアル。
本展の特徴のひとつは、古代エジプト文明を「王や神話の物語」としてだけでなく、「そこに生きていた人々の営み」として紹介している点です。これまでのエジプト展では、王や神、ミイラといった象徴的なテーマが前面に打ち出されることが多く、人々の暮らしそのものに焦点を当てた構成は決して多くはなかったといいます。
〈1st Stage〉は「古代エジプト人の謎を解け!」をテーマに、謎に包まれた文明の背景にある「日常生活」を描きだしています。
なかでも注目したいのが、古代エジプトでもっとも人気の高い職業とされる「書記」に関する展示です。文字を書くことができた書記は、単なる記録係ではなく、神官や高官へとつながる重要な役割を担っていました。会場には書記の像や筆箱、石灰岩の破片に文字を書いた“古代のメモ帳”ともいえるオストラコンなどが並び、遥か昔に生きた書記の姿が具体的に浮かび上がってきます。
また、本展のキービジュアルにもなっている貴族男性のレリーフも見どころのひとつで、一見すると横顔に見える表現の中に、正面を向いた目や肩が描き込まれる「複合視点」という独特の美術表現が用いられています。さらに、整えられた美しい髪型は実は「カツラ」。古代エジプトでは、儀式や葬儀、日常生活など場面に応じてカツラを使い分ける文化があったとされ、この作品からも当時の人々の美意識や装いへのこだわりが感じられます。

ファラオの謎、そして死後の世界へ――壮大なドラマを体感。
〈2nd Stage〉は「ファラオの実像を解明せよ!」をテーマに、絶対的な権力を有した王(ファラオ)の姿と、ピラミッドに秘められた謎に迫ります。展示空間には、歴代ファラオの威厳を感じさせる彫像や石碑、装飾品の数々が並び、その圧倒的な存在感を間近に感じることができます。
見逃せない展示のひとつが、大ピラミッド建造に関わったと考えられている王の頭部です。花崗岩で造られたこの像は、王冠の特徴などからクフ王の可能性も指摘されています。「もしかするとクフ王かもしれない」。そう想像しながら向き合うことで、遠い古代エジプトの世界へと想像が広がり、心が高鳴ります。
また、このセクションに入る前には、ピラミッドの石を実物大で再現した展示や、考古学研究の最前線を紹介する映像も展開されています。レーザー計測やドローンなどの最新技術が古代文明の解明に活用されている様子から、現代の科学と歴史研究がつながっていくおもしろさを感じることができます。
最終セクションとなる〈Final Stage〉のテーマは「死後の世界の門をたたけ!」。葬送文化にスポットを当て、古代エジプト人が抱いていた独特の死生観に迫ります。
古代エジプトでは、人は死後に来世で復活し、永遠の命を得ることができると信じられていました。そのため、魂が再び宿るための“器”としてミイラが重要な役割を担っていたとされています。
会場には、ミイラを納めるためのカルトナージュ(亜麻布などで作られた棺)や内臓を収めるカノプス壺、副葬品の数々など、葬送儀礼に関する多彩な資料が展示されています。人間だけでなく動物のミイラも見ることができ、当時の信仰の広がりを実感できます。
さらに、古代エジプト語の音声を再現した試みも興味深い演出です。現存最古の葬送文書とされる『ピラミッド・テキスト』を読み上げる声が厳かな空間に響き、視覚だけでなく聴覚からも古代の世界を体感できる展示となっています。


文明のはじまりから終わりまでが見渡せる展覧会。
開幕に先立ち、3月19日(木)に報道関係者向けの内覧会が開催されました。あべのハルカス美術館の浅野秀剛館長は、古代エジプト文明について「驚くのはその歴史の長さ。3000年以上続いてきた文明の豊かさに感銘を受けています」と語り、「ブルックリン美術館のコレクションの魅力的なエッセンスが大阪に来ています」と来館を呼びかけました。
つづいてあいさつしたブルックリン美術館 巡回展シニアマネージャーのグウェン・アリアガさんは、「これらは単なる作品ではなく、ひとつの文明という物語の語り部です」と述べ、「数千年前に作られた作品が、日常生活や信仰、芸術的革新、来世について現代の私たちに語りかけてくれる」と展覧会の意義を強調しました。
また、監修を務めた名古屋大学の河江肖剰さんは、本展が「日常生活、王権、葬送文化という3つのテーマで構成されている」と説明し、「人間が生まれてから死ぬまで、文明のはじまりから終わりまでを一貫して見ていくことができる」と紹介。さらに「遺物は単なる作品ではなく、ストーリーテラーとして語りかけてくる存在」と語り、情報量の多い展示をじっくり楽しんでほしいと来場者へメッセージを送りました。

『ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト』
会期:2026年3月20日(金・祝)~6月14日(日) ※休館日:3月23日(月)
開館時間:火〜金/10:00〜20:00、月土日祝/10:00〜18:00(最終入場は閉館の30分前まで)
会場:あべのハルカス美術館
観覧料(税込):
一般 2,300円、大高生1,800円、中小生500円
※障がい者手帳をお持ちの方は、美術館チケットカウンターで購入されたご本人と付き添いの方1名まで当日料金の半額。
詳しくは公式サイト・SNSをご確認ください
公式サイト: https://egypt-brooklyn.exhibit.jp/
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