“関西の”サッカー文化をつくるために。

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関西サッカー協会 理事長
一般社団法人 大阪府サッカー協会 専務理事  藤縄 信夫氏

関西サッカーで、最高潮の盛り上がりをみせている大阪。今回は大阪府サッカー協会専務理事である藤縄信夫氏に、大阪にサッカー文化が根づくために行っていること、そして関西サッカーの現在について語ってもらった。

 

緑のフィールドで、誰もが楽しめるように。

ーー大阪府サッカー協会の役割とは?

「大阪府に限らず、サッカー協会の使命は、普及・育成・強化。これに尽きます。しかし、この3本柱を実現させるための環境が、大阪はまだまだ整っていません」

 

ーーまず環境の整備が重要だと?

「環境が充実する意義は、サッカーだけでなく生涯スポーツという観点からもとても大きいのです。幼稚園や保育所の小さな子どもたちから、おじいちゃんおばあちゃんまでが一緒にスポーツを楽しめる施設をつくることができれば、そこで日常的にスポーツを楽しめることができる。多くの人がスポーツをもっと楽しめれば、そこからサッカーの普及や育成にもつながっていきます」

 

ーーサッカーという競技だけでなく、スポーツ全体を見る視点が必要なのですね。

「これからは、サッカー・スポーツ経験のあるお年寄りがどんどん増えていきます。いろいろな世代が楽しめるための工夫を考えなければいけない時代になりました。そのためにも“さまざまなスポーツを楽しむことができる”というコンセプトがとても大事になってきます」

 

ーー具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

「大阪府サッカー協会として取り組んでいるのが『ACTION FOR DREAM』というプロジェクトです。目的は、43ある大阪府全市町村に人工芝をつくること。大阪には13面の人工芝コートしかないんですよ。今も少ないのですが、一昔前はもっと厳しかった。カマボコのように歪んだグラウンドがあったり、数少ない砂地の人工芝グラウンドにかなりの人数が集まっていたりしました」

 

ーー現状はいかがでしょう?

「直近では、『堺市立サッカーナショナルトレーニングセンター(J-GREEN堺)』に新しく2面をつくりたいと思っています。『DREAM CAMP』という合宿施設もあり、合わせて活用できればと考えています。また、大阪以外の関西地域でもサッカーができる場所をつくろうという動きが出てきています。京都府亀岡市にも専用スタジアム建設が動き始めていますし、これから明るい方向に動いていくのではないでしょうか。サッカー・フットサルを禁止している施設があるのも現状ですが、フィールドや施設を少しずつ増やして環境を整えていきます」

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5月8日。なでしこジャパン、来るんやて。

 

ーー環境整備に加えて、大阪府サッカー協会として力を入れているところは?

「女子サッカーには力を入れています。J-GREEN堺では、全日本女子ユースサッカー選手権大会などの大きな大会も開催されていて、大阪で女子サッカーはとても盛んです。強化に関しては専門の委員会があるので、我々は“普及するために何が必要なのか?”に重点を置いて取り組んでいます」

 

ーー女子サッカーに力を入れるきっかけはあったのですか?

「大阪の女子サッカーは指導者も優秀でとても強いのですが、受け皿が少なくて親元を離れて他県の学校へ進学してしまう選手も多かった。そこでアカデミーをつくれば、少なくとも大阪に残る選択肢はできる。DREAM CAMPという宿泊施設も、女子の育成を応援できればと考えたものでもあります」

 

ーー応援といえば、なでしこジャパンが大阪で試合をしますね。

「5月8日(木)になでしこジャパン対ニュージーランド代表の国際試合が行われます。場所はキンチョウスタジアムです。女子サッカーは来年にワールドカップを控えています。なでしこジャパンは連覇の期待がかかっている世界屈指の強豪国ですし、今回もハイレベルな試合を楽しめると思います。ぜひ、見に来ていただきたいですね!」

 

2014年、日本サッカーの中心に関西がいる!?

ーー男子の日本代表でも関西出身、または関西クラブに所属している選手が多いですね。

「2010年のワールドカップ南アフリカ大会の日本代表では香川真司選手や本田圭佑選手など、半分以上がそうでした。育成において、関西は進んでいると思います。ガンバ大阪は以前から育成に力を入れていましたし、セレッソ大阪も育成世代が世界のクラブで活躍しています。高校世代では京都や滋賀の活躍がここ数年目立っていますし、関西地域での全体的な底上げの成果が出てきているのではないでしょうか」

 

ーー今季のJリーグは関西のクラブが盛り上がっています。

「日本代表の遠藤保仁選手、今野泰幸選手を擁してJ1復帰を一年で果たしたガンバ大阪、柿谷曜一朗選手や山口螢選手など期待の若手が多く、2010年ワールドカップでMVP・得点王に輝いたディエゴ・フォルラン選手を獲得したセレッソ大阪。ヴィッセル神戸も今季は調子がいいですよね。この熱気を、ぜひスタジアムで体感してほしい。ホットな選手たちのプレーを間近で観て、ファン・サポーターと一緒に応援して、サッカーの楽しさを直接感じてもらえたら。協会としても、クラブと連携してJリーグを盛り上げていきたいと考えています」

 

ーー期待の若手や世界的有名選手といったスター選手の影響で、観客層にも変化はあるのでは?

「セレッソ大阪では、やはり女性の観客がかなり増えていますね。他クラブのファン・サポーターも、フォルランを一目見るために舞洲まで行こうと言っているとか。新たな観客層が増えるということは、その方々に合った環境も考える必要があるということです。クラブハウスで女性客が楽しめるカフェがあれば良いでしょうし、そこにグッズを売るスペースがあれば喜ばれるでしょう。今後は新たな層を定着させるために、いかに工夫を凝らすかが観客増員・定着のカギになるのではないでしょうか」

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サッカー文化を一緒につくっていくために。

 

ーー2014年はいよいよワールドカップイヤーです。

「ワールドカップは、他スポーツとは比較できないくらいの世界規模の盛り上がりになります。協会でも記念イベントを計画していますし、各市町村単体でも独自に盛り上げようと考えているようです。皆さんの目にも入ると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください」

 

ーー今までサッカー観戦をしたことない方々が興味を持ちますね。

「欧州では高齢の女性がスタジアムで盛り上がったり、熱く戦術を語ったりする光景も多い。関西では野球でよく見られますけど、サッカーではまだまだです。でも、私がよく行く居酒屋は年配の方々とサッカーの話題で盛り上がっているんですよ。誰もが熱く語れるということが、文化になるということ。ワールドカップを通して、そんな場面が関西でも増えていけば嬉しいですね」

 

ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

「老若男女が応援し、楽しむことができるようにするのが協会の責任。環境を整えることはもちろん、普段の生活でも周りの人とサッカーの話ができるように我々から情報を発信していきたいと思っています。そして、Jリーグを見に来てください。女子サッカーを応援してください。関西のサッカーは高レベルです。今年は話題の選手もたくさんいますから、ぜひ一度スタジアムに足を運んでください。一緒に関西サッカーを盛り上げましょう!」

 

大阪府サッカー協会の情報はこちらでチェック!

http://www.osaka-fa.jp/

 

Text by Yusuke ISHIKAWA

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