映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶レポート「当時を生きた人々の心情が、心の奥深くに残るといい」

生きて帰り、生きて還す──たった80年前、平和な海が戦場だった時代、数々の激戦を最前線で戦い抜いた駆逐艦「雪風」。その知られざる史実を背景に、太平洋戦争の渦中から戦後、さらに現代へとつながる激動の時代を、懸命に生き抜いた人々の姿を通して壮大なスケールで描き出す映画『雪風 YUKIKAZE』が、戦後80年となる2025年8月15日(金)に全国公開されます。
公開に先立ち、8月5日(火)に大阪・TOHOシネマズ梅田にて、舞台挨拶付き先行上映会を開催。「雪風」艦長・寺澤一利役の竹野内豊さん、若き水雷員・井上壮太役の奥平大兼さん、寺澤の妻・志津役の田中麗奈さん、脚本を担当した長谷川康夫さん、そして山田敏久監督が登壇し、いまこの時代に本作を届ける意義について語りました。

 

ワンシーン・ワンシーン、心を込めて撮りました。

TOHOシネマズ梅田・スクリーン1で開催された、今回の先行上映会。満員のお客さまに迎えられ、まず竹野内豊さんが「わたしは舞台をやらないので、こうやってみなさんと直にお会いでる機会ができて非常にうれしいです」とあいさつ。奥平大兼さん、田中麗奈さん、脚本家の長谷川康夫さんもそれぞれに感謝の気持ちを伝え、最後にマイクを手にした山田敏久監督は「このような大きな作品に携わらせてもらい、責任の重さを感じております。一日・一日、ワンシーン・ワンシーン、ワンカット・ワンカット、心を込めて撮りました」と語り、これから映画を鑑賞する観客に作品への真摯な思いを届けました。

 

その後のトークセッションでは、MCを務めるFM802のDJ・飯室大吾さんが「大阪のイメージ」について登壇者たちに質問。竹野内さんはやはり“食”だといい、「先ほどたこ焼きをいただきまして、とてもおいしかったです。関西の方が〈大阪のたこ焼きはうまいから一度食べてもらいたい〉といっていた意味がわかりました」と笑顔で答えます。

奥平さんは“大阪といえばお笑い”という印象だそうで「子どものころから吉本新喜劇をテレビで観ていて、マネしたりしていました。まだ生で観たことがないので〈なんばグランド花月〉へ行ってみたいですね」と本場でのお笑い体験を熱望します。

田中さんも大阪はお笑いのイメージだととつづき、「私は(なんばグランド花月)を見に行きました。みんなで笑うタイミングがあったり、迫力を感じられたりして、生のお笑いはやっぱりすごいなと思いました」と体験を振り返ります。

長谷川さんは「大阪といえば“焼き肉”です」と食の話題に戻し、「演劇で大阪公演があると、劇団の仲間たちと毎日のように鶴橋に焼き肉を食べに行きました。それがとても楽しみでしたね」と懐かしそうに語ってくれました。

京都出身の山田監督は「友だちとよく、なんばや梅田に遊びに来ていた」といい、お笑いについても「吉本新喜劇に関しては子どものころからずっと観ておりますし、京都花月が新京極にあったころから劇場に通っていました。実は、新喜劇の映画の助監督もしたことがあります」と明かすと、奥平さんは「こんな近くに(新喜劇に関わっていた人が)いたなんて!」と驚いていました。

映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪の様子

 

自分を信じて役を演じるキャストのみんなに、艦長にしてもらえた。

映画『雪風 YUKIKAZE』は、真珠湾奇襲攻撃による日米開戦以降、苛烈を極めた数々の戦いを生き抜き、どの戦場でも海に投げ出された多くの仲間たちを救い、ともに還ってきた駆逐艦「雪風」の実話を背景に描かれた作品です。

艦長である寺澤一利を演じた主演の竹野内豊さんは「世界が不穏な情勢に包まれているなかで、自分にできることは何か、俳優という職業を通じてどう表現できるのかを悶々と考えていた時期にこの作品のお話をいただきました。海軍の役ははじめてで、自国を守る駆逐艦の艦長という重責は想像を絶するもの。どう演じればいいのか、正解が見つからないまま撮影に入っていった感じでした」と役づくりへの迷いを語ります。

そんななかで、刺激になったのが共演者たちの姿。「キャストのみなさんが自分を信じて、それぞれの役を演じられている姿を見たときにとても刺激を受けました。気づいてみると、艦長にしてもらえていた。そんな印象でした」と感謝します。

また、脚本についても強い共感を寄せます。「わたしが演じた寺澤は武士道を重んじる人物で、作品全体にその武士道が描かれていると感じました。その武士道は、ただ勇敢に戦う軍人を美徳とするわけではなく、必ず“生きて帰る、生きて還す”、命をつなげていくという物語のテーマがあり、非常に感銘を受けました。この戦後80年というタイミングで、多くの方々に伝えるべき作品だと感じました」。

映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪での竹野内豊さん

 

いま生きているぼくたちが、伝えていくことが大切だと思った。

ミッドウェイ海戦で沈没した巡洋艦から海に投げだされ、「雪風」に命を救われる若き水雷員・井上壮太を演じた奥平さんは「最初に脚本を読んだとき、あまりにも自分が無知すぎてわからないことが多かった。それこそ〈雪風〉という船も知りませんでした。この作品をやることになって、いろいろな資料を見たりして知識をつけていくうちに、知っておくべきことが多いと認識できました」と役を通して学びがあったといいます。

さらに「戦争に関してのお話を聞ける機会もだんだん少なくなってきているし、ぼくと同い歳ぐらいの子たちは戦争について知らないことが多いんじゃないかなと思います。そんななかで、“(戦争を)どう後世に伝えていくのか”を考えると、やはり、いま生きているぼくたちが、大人になったときにちゃんと伝えていくことが大切だと感じました。この映画を通して、そんな想いをもつ人が増えればいいなと思いながら演じていました」語り、若い人たちにも今作を観てもらえるよう願います。

映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪での奥平大兼さん

また、寺澤の妻・志津役の田中さんは、艦長である夫を待つ妻の気持ちに寄り添いながら役づくりをしたそうで「夫を待つといっても、現代と当時では“待つ”ことの重みが全然違うと思います。撮影に入る前に『海軍の家族(山本五十六元帥と父三和義勇と私たち)』という海軍の娘さんが書かれたエッセイを読みました。そこには、“父はときどき帰ってきてたくさん遊んでくれた”とか、“海でいっしょに泳いで川で貝を拾った”とか、大変な時期でも家族といる時間がとてもきらめいていて、心があたたまるようなことを想像がさせてもらえました」と振り返り、「この作品でも、今のわたしたちにも通じる、家族といっしょにいるときにホッとできるような空気が感じられればいいなと思って演じました」と作品のなかで海軍の家族を演じる心境を打ち明けてくれました。

映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪での田中麗奈さん

 

もう二度と、あのような惨状を起こしてはならない。

舞台挨拶の時間はあっという間に過ぎ、最後に登壇者を代表して竹野内さんがあいさつの言葉を述べます。

「戦争を語るというのは非常にむずかしくて、資料を読んで知識を得たとしても、当時を生きた人々の心情まではわかりません。そしていま、わたしたちは戦争の実体験を聞くことができなくなってきています。

人間というものは、同じ過ちを繰り返してしまう生き物です。戦争というものを頭のなかでわかっていながらも、戦争がいけないということもわかっていながらも、時間とともに戦争というものの現実味がどんどん薄れていってしまう──。

この戦後80年というタイミングは、これまで生涯をかけて平和を伝えてきてくださった方々から、今度はわたしたちがバトンを受け取る時期ではないでしょうか。映画を通じて、当時を生きた人々の心情をみなさんといっしょに体感することで、心の奥深くに記憶として残るといいなと思っております。

もう二度と、あのような惨状を起こしてはならない。どうかこの作品をご覧になって、1人でも多くの方々に感想などを広めていただけたら、スタッフ・キャスト一同、うれしく思います」と力強いメッセージを伝え、「それでは最後までゆっくりご覧ください。本日はありがとうございました」と改めてお礼を伝えて舞台挨拶の幕を閉じました。

映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪での長谷川康夫(脚本)さん
映画『雪風 YUKIKAZE』舞台挨拶つき先行上映会 in 大阪での山田敏久監督

 

映画『雪風 YUKIKAZE』

8月15日(金)から、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸などで公開。

公式サイト:https://www.yukikaze-movie.jp/

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masami urayama

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