映画『果てしなきスカーレット』舞台挨拶 「生きることや愛についてのメッセージがたくさん詰まっている」

愛を知りたい。───『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)、そして『竜とそばかすの姫』(21)。国内外の数々の賞に輝き、日本のみならず世界中の観客を魅了し続けているアニメーション映画監督・細田守の最新作『果てしなきスカーレット』がいよいよ2025年11月21日(金)から公開されます。

テーマは、“生きる”。「人は何のために生きるのかを問う、骨太な力強い映画を目指したい。今、この大きなテーマを、観客といっしょに考えたい」という細田監督の想いからはじまった本作は、主人公の王女・スカーレットが父の復讐に失敗するも、≪死者の国≫で再び、宿敵に復讐を果たそうとする今までの細田作品と一線を画す物語。『時をかける少女』から19年、これまでのスタジオ地図・細田守監督作品のイメージを覆す衝撃の最新作です。

公開を目前に控えた11月16日(日)には、「果てしなき全国キャンペーン in 大阪」として特別上映会が開催され、主人公・スカーレットを演じた芦田愛菜さん、彼女とともに旅をする現代の日本人看護師・聖(ひじり)役の岡田将生さん、細田監督がTOHOシネマズなんばに集結。本作への想いを語りました。

 

大阪を舞台にした映画をつくるなら、どう表現するだろう───

公開を前に大阪での初お披露目となった今回の特別上映会。集まった多くの観客は入場時に配布されたたこ焼きモチーフの手持ちうちわを振りながら、芦田愛菜さん、岡田将生さん、細田守監督を迎えました。

兵庫県出身の芦田さんが「今日は来てくれてありがとう。楽しんでいってや」と関西弁であいさつすると、岡田さんも「大阪に来られてめっちゃうれしいわ」とつづきます。細田監督は関西弁の流れに「無理だって」とプレッシャーを感じつつも、「よろしゅうお願いします」とあいさつしていました。

 

今回、「果てしなき全国キャンペーン」として大阪を訪れた3人。祖父母が大阪在住だという芦田さんは、来阪すると必ず「たこせん」を食べるそうで、「すごく好きです。東京ではあまり見かけないので今回も機会があれば食べたいです」と意欲を見せます。

撮影や舞台公演で大阪によく来るという岡田さんは「何年か前に『ハムレット』という演劇を大阪でやらせていただきました。そのときに、チームでUSJに行ってみなさんと遊んだのが本当に楽しかった」と思い出を語ってくれました。

細田監督は前作 『竜とそばかすの姫』(21)での全国キャンペーンでも来阪しており、そのときに「大阪を舞台にした映画をつくるとするならば、大阪をどう表現するだろう」と考えてみたそうで、「たとえば、読売テレビさんなら横に大阪城がある。このすごい景色を映画の中に取り込めないだろうか、街中の大正時代からある大きな建物と現代の建物がいっしょに建っているところも魅力的だな───。そんなことばかり考えて大阪の風景を見ていました」。今後、大阪を舞台にした細田監督作品が登場するかも? そんな期待を感じさせるコメントをいただきました。

映画『果てしなきスカーレット』果てしなき全国キャンペーン in 大阪での芦田愛菜さん

 

芦田さんの後ろ姿が、だんだんスカーレットに見えてきた。

映画『果てしなきスカーレット』は、主人公であるスカーレットが国王である父を殺した敵への復讐を誓い、≪死者の国≫へ落ちながらも自らの生きる意味を見つけ出していく感動の物語。「生きるとは?」という問いを、現代に生きるすべての人々へ真正面から突きつけます。

そんな壮大なストーリーの主人公・スカーレットに命を吹き込んだ芦田さん。「深く悩んで苦しんでいるキャラクターだったので、それをどう表現するのかすごく悩みました。体当たりしないとできないシーンがたくさんあって、もう本当にカラダで向かっていくような感じでした。叫ぶシーンでも、悲しみ、怒り、奮い立つ気持ちなど、いろいろな種類があって、普段出すことのない声ばかり。最初はどう表現したらいいのだろうと戸惑いや悩みがあったのですが、とにかくやっていくうちにスカーレットに近づいていけました」と悩みながら表現していったことを告白します。

そんな芦田さんの姿を見守っていた細田監督は、「スカーレットは王女ですが、地面を這いずり回って、土だらけになりながらがんばるような人。すごく可愛らしい芦田さんのイメージとは違います。でも、収録をしていくと、だんだん芦田さんの後ろ姿がスカーレットに見えてきました」といい、「堂々と背筋を伸ばしてスカーレットと向き合って芝居をする姿がすばらしかった」と絶賛します。

一方の岡田さんは、今作ではじめて長編アニメーション映画の声優に挑戦。「ブースで監督がずっと聞いてくださっていて、ひとつセリフが終わるたびに〈いいですね〉とおっしゃってくれた。それが、本当にうれしくて。作品にも監督の人柄がにじみ出ていますが、アフレコでも監督があたたかく包み込んでくれたので、とてもやりやすい環境でした」と振り返ります。

また、もともと細田作品のファンだという岡田さん。「いちファンとして何も知らずにスクリーンで観たかった」という想いを口にしつつも、「内側に入ったことで監督のすばらしさをより深く知ることができたので、本当にうれしかった」と喜びます。

その言葉を受けて細田監督は、「聖という役は、最初から岡田さんにすごく近いと感じていました。この映画はシェイクスピアの『ハムレット』がベースになっていて、岡田さんはその主演をされているから理解も深い。それに人間性、気持ちのやさしさも近いと感じていたので、“本当の聖”だと思って収録していました」と岡田さんへの厚い信頼を明かしました。

映画『果てしなきスカーレット』果てしなき全国キャンペーン in 大阪での岡田将生さん

 

少しずつ変わっていくスカーレットの瞳が、感情を湧き起こす。

前作『竜とそばかすの姫』の公開から4年。今作は、これまで以上に制作に時間を要したと細田監督はいいます。「〈生と死〉という大きなテーマを掲げ、画づくりも大きく、今までにない規模の作品になりました。いつもであれば3年に1本のペースでつくるのですが、全然間に合わなくてもう1年となり、さらに半年くらいかかってようやくできました。それほど密度のあるスケールの大きな作品に、芦田さんや岡田さんをはじめ、多くの方々から重厚なお芝居をいただきました。時間はかかりましたが、声も音も含め、自信をもって観ていただける作品になっています」。

今作で≪死者の国≫をともに旅するスカーレットと聖を演じた芦田さんと岡田さんは、5年ぶりの共演。以前の作品で岡田さんは芦田さんにつらくあたる役柄だったそうで、「前回はちょっとイヤな役でしたが、今回の聖はいいやつ。真逆でよかったです」と岡田さん。芦田さんも「(聖は)すごくいい人です」と即答します。

そんな2人のバディぶりを間近で見ていた細田監督は、「ブース入って芝居をしている2人の後ろ姿が本物のスカーレットと聖のようで、最初は対極な2人が旅をしているうちにだんだん近づいてくるような、エモーショナルな感じが伝わってきた。それが映画に力を与えてくださっていて、録りながらグッとくるものが何度もありました」と自身の感動を伝えてくれました。

感動といえば、岡田さんは完成した本作を鑑賞したときに号泣したそう。「関わっている作品を観たときは自分の至らない部分が見えてしまったりするのですが、今回はこの世界に没入しました。聖をやっていたからこそ、スカーレットの悲しみや苦しみ、希望がわかって、スカーレットの隣に立てたことがすごくうれしかったです」と語り、その涙がうれし涙であったことを明かします。

さらに岡田さんは、スカーレットの“瞳”にも注目。「瞳が少しずつ変わっていって、その変わっていく様子が、こちらの感情をふつふつと湧き起こしてくれるんです」と魅力を語りました。

映画『果てしなきスカーレット』果てしなき全国キャンペーン in 大阪の様子

 

スタッフや俳優が魂を吹き込んだ作品を、ようやく届けられる。

今作は待望の細田守監督・最新作。公開を心待ちにするファンへ向けて、芦田さんは「最初に声を入れたのが1年半前くらいで、まだまだ公開は先だなと思っていたのですが、気がついたら来週公開。みなさんのもとへお届けできる日が近づいていて少し緊張もありますが、早くたくさんの方に観ていただきたい気持ちでいっぱいです」と想いを口にします。つづく岡田さんも「とにかく早く観てほしいなと思っています。できれば劇場の大きなスクリーンでこの作品のすばらしさを観ていただけたらうれしいです」ともうすぐ作品が届けられる喜びを表現しました。

さらに細田監督は、「4年以上かかり長かったのですが、ようやくみなさんに届けられるところまでたどり着きました。ここまで来られたのは、非常に優秀なスタッフたちがたくさん試行錯誤しながら作品に取り組み、すばらしい俳優のみなさんが魂を吹き込んでくれたからこそ。みんなの力が詰まった作品を届けられることが、すごくうれしいです」と胸の内を伝えます。

最後は登壇者を代表して芦田さんが締めくくり、「この映画には、生きることや愛についてのメッセージがたくさん詰まっています。誰かを、何かを、そして自分自身を愛するということはすごく大事なことなんじゃないかと感じさせてくれる作品だと私は思います。みなさんにとっての〈生きること〉や〈愛って何だろう〉を考えながら観ていただけるとうれしいです」とあいさつ。会場には大きな拍手が響き渡りました。

映画『果てしなきスカーレット』果てしなき全国キャンペーン in 大阪での細田守監督

 

映画『果てしなきスカーレット』

2025年11月21日(金)から、TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、MOVIX京都、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸などで公開。

公式サイト:https://scarlet-movie.jp/

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masami urayama

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