展覧会「バンクシーって誰?展」 怒り? 愛?そのメッセージは今こそ響く!

再現展示《Flower Thrower》

少女と赤い風船を描いた作品が高額で落札されると、額に仕込まれたシュレッダーで突如細断される―――この2018年の事件で世界を轟かせたアート界の異端児・バンクシー。ストリートでの表現をつづける彼は世界中で作品を発信するも、その姿は依然として謎に包まれています。

グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボで開催中の『バンクシーって誰?展』では、彼の主戦場である〈ストリート〉に着目。忠実に再現した街並みのなかで、リアルにバンクシーを体感できます。(〜6/12まで開催中)

 

映画のセット? 世界各地のバンクシー作品を街並みから再現!

1990年代から街を舞台にストリート・アートを描きはじめた覆面アーティスト・バンクシー。神出鬼没で世界のいたるところに作品を発表していますが、無許可で違法なものも多く、さらには壁をキャンバスとしているので発表されたままのカタチで残すことは困難です。(彼はそれを意図的にやっているのですが) また、コロナ禍の今、世界各地にある彼の作品を見に行くのもまだまだ無理な話。

本展は、そんな〈バンクシーの世界をリアルに体感したいけど、できない!〉というもどかしさを、解消してくれる展覧会です。彼が世界中で〈ボム(投下)〉してきた作品のなかから選りすぐり、リアルサイズで再現しています。さらに、ストリート・アートの醍醐味を楽しめるよう、作品だけでなく周囲の街並みまでも映画のセットのようなクオリティで再現。車の音など街のノイズをBGMにするこだわりようで、現地に身をおいて作品と対峙しているような疑似体験ができる展示を試みています。

さらにうれしいのが、場内での撮影が可能なこと。自分が作品の一部になれたり、街並みのなかで記念撮影できたりして、ちょっと海外旅行をした気分にもなれます。

現在は存在しない、バンクシーがウォータールー駅近くのトンネルに描いた作品を再現。《再現展示》

バンクシーの世界に入り込み、彼のメッセージを考えるキッカケにも。

街並みを再現した展示は、バンクシーの活動の3大地域、ヨーロッパ・アメリカ・中東で大きくわけられています。イギリスエリアでまず目を引くのが、バンクシーの故郷だといわれているブリストルの作品「Aachoo!!(2020年)」。コロナ禍にボムされたこちらは、スカーフをかぶったおばあさんがAachoo(ハクションの意)した口から勢いよく入れ歯が飛び出しています。おばあさんのクシャミによって家が傾いたように見える遊び心のある作品のように見えますが、彼女がマスクをしていないため、ウイルスの拡散への警鐘を鳴らしているとも考えられています。

「Aachoo!!(2020年)」は、傾斜が22度もある急な坂道の家の壁に描かれている。《再現展示》

中東エリアにはパレスチナ人自治区・ガザの作品「Giant Kitten(2015)」を再現。イスラエルの軍事攻撃により廃墟となった地区に描かれた子猫は、悲しいような、困ったような、顔で鉄くずをおもちゃにしています。バンクシーはウェブサイトを通じて、「インターネットの人たちはガザの現実より、子猫の写真ばかりを見ている」とコメント。人々の関心を皮肉った今作によってガザは世間の注目を再び集めることができ、国際的な支援団体が支援の名乗りを上げる結果につながったそうです。

展示では、ガザ地区の廃墟の銃弾跡も再現しており、バンクシーのメッセージをより感じやすい。《再現展示》

バンクシーは2006年にロサンゼルスで個展「Barely Legal(かろうじて合法)」を開催。本展では、当時は本物のインド象にペイントを施して展示したことを再現。英語の慣用句「Elephant in the room(部屋に象がいる)」には「見て見ぬ振りをする」という意味があり、バンクシーが何を伝えたかったのか? を考えさせられます。

当時、実際に展示した本物の象には、動物に有害ではない塗料が使用されたそう。《再現展示》

このように、バンクシーはとてもメッセージ性の強いアーティスト。バンクシーが本当に伝えたいメッセージは何か? その根底に流れるのは、愛か? 怒りか? それは本人にしかわかりません。しかし、現在進行系で世界が混乱している今、没入型の展覧会でバンクシーの世界に入り込み、彼がどんなメッセージを伝えようとしているのかを考えてみることも必要な気がしています。

 

プライベートコレクターの秘蔵作品も一挙公開!

バンクシーは作品を販売しており、購入者の手にわたったものは一般公開されないため通常は美術館で鑑賞できません。『バンクシーは誰?展』では、プライベート・コレクターが所有する貴重な作品も多数展示。ファッション・デザイナーのポール・スミス氏が所有する「Congestion Charge(2004年)」は、既存作品に描き足して意味を変える〈デトーナメント(転用)〉という手法がとられ、 蚤の市で販売されていた風景画に渋滞緩和を目的とした道路課金「コンジェスチョン・チャージ」の標識が描き加えられています。〈バンクシー=ステンシル〉というイメージがありますが、多様な手法でメッセージを表現していることがわかります。

また、個人的には、「Girl with TV(2003年)」という作品が観られたのもトピックです。バンクシーはイギリスのロックバンド・Blur(ブラー)のアルバム『Think Tank』のジャケットを描いており、今作は彼らが表紙を飾る雑誌の撮影用に制作した3作のうちのひとつ。実際の撮影では違う作品が採用されているのですが、ブラーファンとしてはアザー作品が観られてうれしかったです。

で、バンクシーって誰なのでしょう?《再現展示》

 

「バンクシーって誰?展」

期間:2022年4月23日(土)〜6月12日(日)※会期中無休

開館時間:平日11:00〜20:00、土日祝10:00〜19:00 ※入館は閉館の30分前まで

会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ

入場料(税込):平日 一般2,000円/大学・高校生1,800円/中学・小学生1,300円、土日祝 一般2,200円/大学・高校生2,000円/中学・小学生1,500円

※未就学児無料

※学生券をお求めの際は学生証の提示が必要。(小学生を除く)

※会場内混雑の際はご入場をお待ちいただく場合があります。

※障害者手帳をご提示の方は本人及び介護者1名まで無料。

公式サイト:https://whoisbanksy-osaka.jp/

masami urayama

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