映画『すずめの戸締まり』舞台挨拶。〈わたしもつくるのを手伝った〉という気持ちで観ていただけたら。

世界中を魅了し続ける新海誠監督の、集大成にして最高傑作だとされる映画『すずめの戸締まり』。公開3日間で興行収入18億円を突破し最高のスタートをきった本作の〈公開記念舞台挨拶 in大阪〉が11月17日(木)にTOHOシネマズ梅田で開催されました。

ファンで埋め尽くされた熱気に満ちた会場には新海誠監督、主人公のすずめに声の命を吹き込んだ原菜乃華さん、扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役の松村北斗さんが登壇。本作への想いや舞台挨拶の地・大阪の印象、さらにはこの物語を演じたことで得られた変化など多彩なテーマを語り尽くし、映画『すずめの戸締まり』の魅力を広く深く伝えてくれました。

 

大阪はいつか描いてみたい場所。

映画『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語。戸締まりの旅で日本各地を巡ったすずめにちなみ、舞台挨拶でも全国を駆けぬける、全国舞台挨拶キャンペーン「行ってきます日本」を展開しています。

 

キャンペーンの初日の地に選ばれたのが関西。この日に神戸の2会場、大阪・なんばでの1会場の舞台挨拶を終えた新海誠監督、原菜乃華さん、松村北斗さんがTOHOシネマズ梅田の会場に駆けつけてくれました。登場を待ち焦がれていた700人以上の観客に大きな拍手で迎えられ、まず新海監督が「本作を観ていただき感謝します」とあいさつ。つづいて、すずめ役の原さんが「こんなに大勢の方の前でお話できてうれしい」と素直に喜びを表します。松村さんからは「ネタバレのギリギリまで話せたらと思っています」とワクワクするコメントが飛び出し、舞台挨拶がスタートします。

 

舞台挨拶でMCを務めるのは関西ではおなじみのラジオ局FM802のDJ・飯室大吾さん。関西弁を交えながらの軽快な口調でテンポよく進行し、場を盛り上げてくれます。そんな飯室さんから大阪の印象を問われると、ドラマの撮影やライブなどで何度も来阪している松村さんは「反応がいいし、積極的なイメージです。全国各地でそれぞれによさはありますが、大阪はコミュニケーションのよさがあるように感じます。今もほかの劇場より目線がグッと前にあるような気がして、うれしいですね」。

先日ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに遊びに来たことを明かしてくれた原さんは「おいしくて、楽しいところというイメージ。粉ものも好きなので、次に来たときはうどんを食べたいです」と目を輝かせます。新海監督は今作で大阪ではなく神戸が登場していることにふれ、「二年くらい前に神戸へ来て、ここにしようと決めました。大阪に来るといつも〈次は大阪を舞台にしてください〉といわれるから、少し後ろめたさがあるのですが…。でも、大阪はいつか描いてみたい場所ではあります」と、今後の作品で大阪が登場するかもしれない期待感をもたせてくれます。

映画『すずめの戸締まり』公開記念舞台挨拶 in大阪

 

ただの移動しているのではなく、人と人の間を通っているのだと感じるようになった。

今回の舞台挨拶では、観客からの質問を受け付ける質問タイムを設けています。MCの飯室さんが「質問のある人は手を挙げてください」と呼びかけると、さすが大阪、多くの方がすばやく手を挙げます。その光景に「手を挙げるのが早い。ステキです」と松村さん。

最初に当たった方からの質問は、〈全国を巡る物語の本作を体験して、例えば今日のように東京から関西までの移動で新たに感じることはありますか?〉というもの。原さんは「映画のすずめは移動のなかで富士山を見逃すのですが、今日のわたしもまんまと富士山を見逃してショックを受けました。帰りはちゃんと見たいけど、きっと寝ちゃうと思います(笑)」とかわいい告白をしてくれます。新海監督は、「自分たちで描いたのに、神戸に来たら〈映画といっしょだ〉と思いました」とファンのようなコメントをし、さらには松村さん原さんを交えて3人で記念撮影をしたことも教えてくれます。

 

仕事で移動することの多い松村さんは、“移動する”ことへの概念に変化が生まれたようで「これまでぼくらが移動していたときは、(人や景色が)通りすぎていくだけでした。でも、そこには生活があって、人の想いもある。全国でいろいろな人と出会っていくこの映画を体験したことで、移動はただ位置が移っているのではなく、人と人の間を通っていくこと。より人を感じられるようになりました」。

このコメントを受けた新海監督は「映画でもすずめが移動中に過ぎ去っていく風景を眺めながら、この風景の人たちとわたしは一生、関わることがないと感じるシーンがあります。不思議ですよね。電車からはたくさんの人やものが見えるのに、あのコンビニに入ることも、あのビルの上に立つことも、あの窓から外を眺めることもありません。でも、関わらないけれど、そういう景色を見ていると、この世界がより愛おしくなります」。

映画『すずめの戸締まり』公開記念舞台挨拶 in大阪

 

こんなに幸せな待ち時間はない。

質問タイムでは、小さなお子さまも手をあげていました。飯室さんが目を留めて指名すると、注目された女の子は急に恥ずかしくなったのかモジモジとうつむきはじめます。登壇者たちはその待ち時間を笑顔で受け止め、「楽しくて、ワクワクします。こんなに幸せな待ち時間はないですよ」と松村さん。あたたかくやさしい空気が流れると女の子が口を開き、〈みなさんの好きな場面はどこですか?〉と質問できます。

新海監督は「すずめと草太が一生懸命に子守りをする場面。草太は椅子なのに、みんなが友だちのようになれます。その一瞬の時間をコミカルに描けました」。松村さんは「双子のドリンクをこぼさないように草太ががんばるところ」といい、原さんは「ポテサラ入り焼きうどんのシーンでの草太の反応」がかわいらしくて好きだと答えます。そのコメントを聞いた新海監督が「あそこの松村くんの芝居はよかったですよね。一瞬のひと言なのですが、そこに気をつけてもう一回見てほしい」とつづき、松村さんは「そういってもらえて本当にうれしい!」と喜んでいました。

映画『すずめの戸締まり』公開記念舞台挨拶 in大阪

 

この映画は、観客のみなさんにも手伝ってもらっている。

観客からの最後の質問は〈すずめと草太を演じて影響されたことは?〉というもの。新海監督もそれを問うてみたかったらしく「ひとつの作品が終わると役者さんは違う監督のところへ行きます。でも、(演者には)なにか爪痕のようなものを残しておきたいとも思っていた」と打ち明けます。松村さんが「自分がもっていないと思っていた声を現場でつくっていく作業をしたので、何気ない日常の声でも今まで聞いたことがない声を使うようになりました。メンバーなど身近な人から〈その声、新海作品すぎる〉といわれます」答えると、「それはうれしい」と笑顔に。さらに松村さんは「草太を身近なものに感じるようになって、〈人にやさしくする〉といった立ち振舞がやりやすくなった」と自身の変化を口にします。

また、主役という大きな役割を任された原さんは「わからないものに飛び込んで、一生懸命にくらいついていくという毎日で度胸がつきました。すずめのまっすぐさや思い切りのよさにすごく背中を押されたし、すずめと自分が似てきたのかもしれません」と作品を通して自らの成長を実感。松村さんからも「アフレコ中に隣で見ていて、原さんが日に日にすずめになっていくのがわかった」と認められると、原さんは「初耳です。うれしいです」とはにかみつつ喜びを表します。

 

最後は新海監督が再びマイクを手にし、舞台挨拶でとても幸せな時間が過ごせたと感謝。つづけて音楽を担当したRADWIMPSの曲である『カナタハルカ』に例えて、映画がみんなの創造によって完成したことを伝えます。「〈僕にはない 僕にはないものでできてる〉という歌詞があるのですが、この映画もそうだったなと思います。ここにいる二人を含めたすばらしいスタッフが、ぼくにないものを寄せ合って創り上げてくれました。そして、そのなかには、観客のみなさんも含まれています。みなさんが“次はこういうものが見たい”という気持ちを向けてくれたからこの映画はできました。気に入っていただけた方は〈あの映画はわたしもつくるのを手伝ったんだよ〉という気持ちで見ていただければうれしいです」。

映画『すずめの戸締まり』公開記念舞台挨拶 in大阪

 

そして、新海監督は締めの言葉を松村さんと原さんに託します。

二人は観客をまっすぐ見つめ、松村さんからの「改めて、すずめの戸締まりのはじまりです。それでは…」という呼びかけに原さんが応えます。

 

「行こう、すずめさん」「行ってきます!」

 

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 

映画『すずめの戸締まり』

原作・脚本・監督:新海誠  

声の出演:原菜乃華 松村北斗 深津絵里 染谷将太 伊藤沙莉 花瀬琴音 花澤香菜 松本白鸚

キャラクターデザイン:田中将賀

作画監督:土屋堅一

美術監督:丹治匠

音楽:RADWIMPS 陣内一真

全国東宝系公開中

公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/

masami urayama

関連記事