展覧会「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」 光を宿す名画に出会う。

古代から現代まで、約50万点にものぼる文化財を所蔵するエルサレムのイスラエル博物館。同館が誇る珠玉の印象派コレクションが来日する展覧会「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」があべのハルカス美術館で開催されています。(〜4/3まで)。

約70点の出品作のおよそ8割が日本初公開。モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガンなどのビッグネームのまだ目にしていない作品と出会える貴重な機会です。お見逃しなく!

 

外光から内なる光へと向かっていく、画家たちの〈光の系譜〉をたどる展覧会。

「印象派」という言葉は、1874年にパリのサロン(官展)に落選したことに不満をもったモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガなどの画家たちがグループ展を開催したことから生まれたといわれています。グループ展の評判は散々で「絵画というより〈印象〉を描いただけ」と評論家から冷笑されたのですが、画家たちは〈印象を描く〉ことを良しとし、自ら印象派と名乗るようになったのだとか。

 

印象派の画家たちは外に出て移ろう自然や人々の営みを見つめ、自分の目でみて感じた印象を描いていきます。そして、完成した作品たちには〈光〉が宿っていたのです。明るい景色だけでなく暗く鬱屈した絵のなかにも光は存在し、作品のなかの光を目にした人々はどこか救われるような気持ちになったのではないでしょうか。

 

本展は、印象派・ポスト印象派の名品を、「光の系譜」としてたどっていく構成。モネやルノワール、ゴッホら画家たちが外光から内なる光へと向かっていく様を、作品を通して感じられる展覧会になっています。

 

展示は4つの章で構成。1章は〈水の風景と反映〉をテーマに印象派の先駆けとなったバルビゾン派の作品を含めて展示しています。バルビゾン派とはパリ郊外・フォンテーヌブローの森にあるバルビゾン村に集った画家たちのこと。都会の喧騒を離れ、おだやかな環境で描かれているからか、詩情豊かに水と光の表情をとらえている作品が多いように感じます。

しかし、なかには重々しい水辺の景色をリアリティのある筆致で力強く描いた作品もあります。写実主義の先駆者ギュスターヴ・クールベの「海景色」もそのひとつ。ただならぬ不穏さを感じさせる雲の前で盛り上がる波は意思の強さをまとい、どこか痛快な心地よさもあります。こちらも初来日なので、ぜひ目の前でそのダイナミックな絵画を体験してみてください。

ギュスターヴ・クールベ「海景色」 1869年 油彩/カンヴァス

 

そして、本展のハイライトとなる作品が、クロード・モネの「睡蓮の池」です。1909年の個展に出品された連作のうちの一点で、今回の展示が日本初。水面に反射する空と雲に浮かぶ睡蓮が溶け込んでいるため、どこまでが反射でどこまでは実像か区別がつかず、一見では情景がわかりにくいのですが、だからこそ奥行きの深さに引き込まれます。個人的には、これまで見てきた睡蓮作品とは違う印象を受けました。

クロード・モネ「睡蓮の池」1907年 油彩/カンヴァス

 

大ブレイク中のレッサー・ユリィの作品も展示。

2章のテーマは〈自然と人のいる風景〉。今も昔も、人々は自然のなかで暮らしています。印象派の画家たちは自然とともに生きる人々も数多く描いており、そのなかの名品が本展に展示されています。

なかでも印象的なのは、やはりフィンセント・ファン・ゴッホ。初来日作品の「プロヴァンスの収穫期」は黄金色に染まった麦畑を、「麦畑とポピー」では鮮やかな緑と赤で植物のみずみずしさを描いています。ゴッホには暗いイメージもありますが、〈夏のゴッホ〉はリズミカルで軽快。明るい音楽が聞こえてくるような心地よさがあって、わたしはとても好きです。

フィンセント・ファン・ゴッホ「麦畑とポピー」1888年 油彩/カンヴァス

 

そして、本展の注目画家のひとりがレッサー・ユリィ。ドイツやイスラエルでは知られていたようですが、日本ではこれまであまり紹介されることがなかったユダヤ系の画家です。大阪展の前に開催されていた東京展ではユリィの作品が大人気となり、絵ハガキが爆発的に売れたそう。3章の〈都市の風景〉に展示されている「夜のポツダム広場」は雨に濡れる街の風景のなかに黒い人影が描かれており、きらびやかなネオンとの対比が現在社会ともリンクして映ります。普遍的な明と暗の光景。見る人の心をとらえて離さなかったのもわかるような気がします。

レッサー・ユリィ「夜のポツダム広場」1920年代半ば 油彩/カンヴァス

 

4章のテーマは〈人物と生物〉。水、自然と人、街の風景とつづいてきて、最後は静かな光を感じるゾーンでこの展覧会は締めくくられます。躍動的であったり、移ろいでいったりするモチーフではなく、そこに静としてあるものを画家たちが見つめて描いた作品たち。そこにある光はあたたかく、懐かしさすら感じます。目にした人はやさしい気持ちになって会場を後にできるのではないでしょうか。

ピエール=オーギュスト・ルノワール「花瓶にいけられた薔薇」1880年頃 油彩/カンヴァス

 

「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」

期間:2022年1月28日(金)〜4月3日(日)

開館時間:火〜金 10:00〜20:00、月土日祝 10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)

休館日:1月31日、2月7日の各月曜日

会場:あべのハルカス美術館

観覧料観覧料:一般1,900円/大高生1,100円/中小生500円(前売りは各200円引き)

※料金は全て税込。

※障がい者手帳をお持ちの方は、美術カウンターで購入された本人と付き添い1名まで当日料金の半額。

展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。

公式サイト:https://www.ktv.jp/event/insyouha/

masami urayama

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