展覧会「楳図かずお大美術展」 天才の証明! 大自信作の27年ぶり新作、いますぐ体感せよ!

恐怖マンガやギャグマンガ、さらには少女マンガまで、カテゴリーにとらわれない名作を次々と世に送り出している規格外の芸術家・楳図かずお。その作品たちは、現代社会の課題を予言しているかのような先見性をもち、見る者を混沌とさせる幻視的なヴィジョンも提示しています。

そんな楳図かずおの比類なき芸術性に焦点を当てた展覧会「楳図かずお大美術展」が、あべのハルカス美術館で開催中です。期間は11月20日まで。急いで!

 

4年の歳月を費やした、27年ぶりの新作を公開!

楳図かずおといえば、恐怖マンガやギャグマンガを描くマンガ家。または、赤と白のボーダーを着たエキセントリックなアーティスト。そんなイメージをもっている人も多いのではないでしょうか。(かくいう、わたしもそうでした)

しかし、この展覧会を観ると、楳図かずおが〈いかに優れた美術人であるか〉がわかります。

ⓒ 楳図かずお/小学館

 

会場には、楳図かずおの足跡をたどる年表や過去作品の資料などが展示されていますが、それはほんの一部。過去作品の原画を楽しみたいと思っている方には、肩透かしを食らう構成かもしれません。しかし、本展は、楳図かずおの〈過去の偉大さ〉を振り返るのではなく、〈現在進行形の創造〉を体感できる場所。「回顧展」ではなく、「大美術展」なのです。

 

見どころは、なんといっても『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』。1990年代に発表した『14歳』(←名作!)以来、27年ぶりの新作です。

本作は、1980年代に発表した『わたしは真悟』の続編として描かれています。『わたしは真悟』は、自我が芽生えた産業用ロボット「真悟」が父と母である小学6年生の悟と真鈴を探し求め、ネットワークを通じて自ら進化していく姿を描いたSF長編マンガ。現代で存在感を増す〈AI(人工知能)〉を盛り込んだマンガとして、先見性の高さを評価されている屈指の名作です。

 

こう書くと、“『わたしは真悟』を読んでないけど大丈夫?” と思われるかもしれませんが、本作は続編という位置づけにありながら、同時に時空を超えたそのパラレル・ヴィジョン(並行世界)を描いていいます。『わたしは真悟』を未読でも十分に楽しめるのでご安心を。

また、『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』はマンガではなく、アクリル絵具を使用した絵画の連作。101点もの原画はそのひとつずつが作品として成り立つ高い芸術性を誇っており、制作に4年の期間を費やしたというのも納得です。

大胆な構図と斬新な色使い、緻密なタッチに宿る得体の知れぬ気味悪さ…これらは、これまでの楳図かずおの作品にもあった魅力ですが、本作でさらに進化。その奥深さに魅せられ、ストーリーを追いながら一回、各作品の細部に目を凝らしながらもう一回と、何度でも噛み締めたくなる味わい深い作品になっています。

ⓒ 楳図かずお

 

楳図作品をテーマにした、現代アーティストによるインスタレーションも展示!

『楳図かずお大美術展』では、楳図作品をテーマとした現代アーティストのインスタレーションも展示しています。制作する現代アーティストは3組で、千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット・エキソニモは『わたしは真悟』の先進的世界を映像インスタレーションで表現。地上16階にあるというあべのハルカス美術館の地理的特徴を活かし、大阪の街と空を借景したスケールの大きな展示になっています。

さらに、富安由真は『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』の素描が並ぶ展示室に小屋のような作品をつくり、楳図作品のもつ異質さを立体的に訴えるアプローチを試みています。鴻池朋子は『14歳』をテーマとし、ドローイングやオブジェなどを発表。それぞれのアーティストが、独自の切り口から新たな楳図ワールドへと誘ってくれます。

エキソニモ 《回想回路》©エキソニモ ©楳図かずお/小学館

 

本展は最後の展示を「未来へ」としています。

『漂流教室』のラストシーン、子どもたちは母が待つ現在に戻ることかできませんでした。しかし、子どもたちは『14歳』でチラノサウルス号に乗って宇宙の果にまでおよぶ旅をします。そして、地球で唯一生き残った知性を持つゴキブリのゴキンチが待つ地球へと帰ってくるのです。時空を超えて一本の虹のように美しくつながる『漂流教室』と『14歳』のラストシーン。改めて目にすると、未来への可能を信じたくなります。

©楳図かずお/小学館

 

11月1日〜11月11日は、ボーダーを着て行こう!

楳図かずおのアイコンといえば、赤と白のボーダー。また、11月11日は〈1111〉とつづくことから、「しましまの日」とも呼ばれているそうです。

そこで、本展では「Dress Code DAYS:UMEZZ BORDER」というイベントを開催。11月1日(火)から11月11日(金)までの平日に限り、ボーダー(横縞)柄の服を着て来館した方に〈オリジナルポストカード〉をプレゼントしています。先着配布でなくなり次第終了するようなので、確実に手に入れたい方は早めの来館をおすすめします。

 

「楳図かずお大美術展」

期間:2022年9月17日(土)〜11月20日(日)

開館時間:火〜金 10:00〜20:00/月土日祝 10:00〜18:00 ※入館は閉館30分前まで

会場:あべのハルカス美術館

観覧料(税込):一般1,700円/大高生1,300円/中小生500円

展覧会の詳細は公式サイトをご覧ください。

公式サイト:https://umezz-art.jp/

masami urayama

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