【サポーター目線】調子のいい時に頑張る。

ライターの紀井です。サッカー観戦が好きです。京都サンガのサポーターですが、関西のクラブはみんな応援しています。関西以外のクラブもJリーグ以外のカテゴリーの試合も見ます。「ぬるサポ」です…すいません。アイコンの写真はヴィッセル神戸の河岡幹彦さんにインタビューした後に、スタジアムツアーに参加して撮影しました。「今日は選手たちがよく頑張ってくれました」とか監督になりきってコメントしてたら嬉しくなって笑いがこみあげてきちゃった一コマです。

さて。いきなりですが今シーズンのJ2リーグ。京都サンガはピーター・ウタカ選手の活躍も素晴らしく序盤はいいカンジで「今年こそ昇格っ!」というのはまあちょっと気が早かったですが、リーグの折り返しとなる第21節終了時点で勝点34の5位と健闘しています。一方勝点44で首位をいくのは昇格したばかりの北九州です。

この北九州が「面白い!」という記事を少し前にネットで見つけました。ざっくり言うと「小林伸二監督のサッカーが山形時代から進化している」という内容で(ざっくりすぎる)、私も第16節の甲府戦を見て、記事のとおり積極的に前からプレスをかけていく選手たちのプレーにわくわくしました。試合のほうは伊藤彰監督率いる甲府が0-3で勝利、解説の人曰く「北九州がやりたいサッカーを甲府がやった」という展開でしたけど。なお、試合後のインタビューで両監督が名前を挙げたキーマンの甲府・泉澤仁選手は阪南大学サッカー部出身で、関西サッカーサポとしては見逃せないポイントです。

甲府戦は落としたけれど、その後も北九州は順調に勝点を伸ばしてきました(21節は水戸に負けてしまいましたが)。そんな北九州の選手たちのコメントの中に「調子のいい時に頑張る」というフレーズがありました。それを聞いて、私はJ2リーグ2008年のシーズンのことを思い出しました。

 

2008年6月15日、私はNDソフトスタジアム山形にいました。モンテディオ山形vsベガルタ仙台。みちのくダービーです。その頃の山形の印象は臼井幸平選手が古巣の湘南に移籍してしまい、前年の天皇杯で活躍した佐々木隼人選手もガンバに移籍…という程度で、むしろ思い入れは仙台のほうにありました。何といっても2001年に西京極で昇格を決めて以来、何度となく京都サンガと昇格・降格をともにしてきたクラブです(そんな時代があったのです)。マスコットのコトノとベガッ太さんの恋の行方(?)も気になるところでした(笑)。仙台のスタジアムにも何度も行きました。今回のように山形まで行くのは初めてでしたが、「盛り上がる」と評判のみちのくダービーをスタジアム観戦できる喜びはひとしおです。あの日のスタメンは、林卓人、田村直也、木谷公亮、岡山一成、田ノ上信也、永井篤志、千葉直樹、梁勇基、関口訓充、平瀬智行、中島祐希、サブには荻原達郎、渡辺広大、富田晋伍、佐藤由紀彦、中原貴之…(敬称略)。ああ…名前を見ているだけで胸が熱くなります。

一方、その頃の山形は小林伸二監督体制になった最初のシーズン。リーグはサンフレッチェ広島が絶好調で首位をキープする中(勝点100でぶっちぎり優勝・昇格したシーズンです)、19節を終えて山形も2位につけていました。とはいえ、対仙台戦はここまで658日間勝利なし。直近の対戦となった5月18日のアウェイ戦も前半2点リードしながら後半に逆転されるという相性の悪さです。6月15日の試合の時点では、仙台は4位とはいえ山形との勝点差は4。前節横浜FC戦で勝利した勢いのまま、今節も勝利して上位との差を詰めたいところです。試合の前日に発生した岩手・宮城内陸地震の影響が心配されましたが(選手たちは喪章をつけての試合でした)、当日のスタジアムには仙台のサポーターもたくさん訪れていました。来場者は15,422人(今調べた)。私がスタジアムに到着したのは16時のキックオフの1時間ほど前で、すでにスタンドはたくさんのサポーターで賑わっていました。

午後3時すぎ、6月の陽射しはまだ強いけれど、冷たいビールを飲みながら選手たちのウォーミングアップを眺めるひとときは本当に至福です。と、気づいたことがありました。山形側のスタンドが何だか盛り上がっているのです。アップを終えて引き上げてくる選手たちが、サポーターを煽るように、そしてサポーターに応えるように、スタンドに向かって拍手をしていました。とてもいい雰囲気でした。選手たちが心から楽しんでいるのが伝わってきました。

そしてそれは、試合でも同じでした。立ち上がりこそ仙台が攻め込んだものの、18分に先制してからは山形のペース。チャレンジングなパスカット、セカンドボールへのねばり、ダイナミックなサイドチェンジなどなど、選手たちの「サッカーが楽しくて仕方ない」という気持ちが伝わるプレーに夢中になりました。「えっ、そのパス通る⁉」「えっ、そこ止める⁉」「えっ 山形強い!」「山形強いやんっ!!」。わくわくするサッカーに出会えた嬉しさに、思わず叫んでいました。試合は3-0で山形が659日ぶりに仙台に勝利。あの日の山形のスタメンは、清水健太、宮本卓也、小原章吾、石井秀典、石川竜也、財前宣之、秋葉勝、佐藤健太郎、宮沢克行、北村知隆、長谷川悠、サブは遠藤大志、木村誠、園田拓也、宮崎光平、根本亮助…(敬称略)。あれから何度、山形の試合を見に行ったでしょうか。あの頃のメンバーのことは、今も思い出すだけで震えます。

その試合からさらに弾みをつけたように、山形の快進撃は続きました。そんな絶好調のシーズンに小林監督が話していたのがあの言葉だったのです。

「調子のいい時に頑張る。調子の悪い時に頑張るのは辛いけど、調子のいい時に頑張るのは楽しい」

人間だから好調不調の波はあります。だから、調子のいい時に頑張る。そして、調子がよくて頑張るのが楽しいチームの試合は、見ていても楽しくてたまらなくなります。山形は、そんな人を惹きつけるようなサッカーで勝利を続け、J1昇格へと駆け上がっていきました。

 

今シーズンのJ2リーグはまだまだ混戦が続いています。北九州は(水戸に敗れたものの)勝点44で首位をキープしていますが、勝点1差の43で徳島が2位、勝点40で3位に長崎が迫っています。1年でのJ1復帰を目指す長崎の手倉森誠監督は2008年のあの日の仙台を率いていたというのも、感慨深いものがあります(あのシーズンは3位で入替戦に臨みましたが、磐田に敗れ昇格を逃しました)。さらに勝点37で福岡が、そして勝点34で京都サンガが続きます!(甲府も34で続きます)

「調子のいい時に頑張る」。選手たちの気持ちが伝わるサッカーで、北九州がこのまま昇格へと駆け上がるのか。徳島が、長崎が、福岡が、その行く手を阻むのか。京都サンガはどう勝ち上がっていくのか。すぐ下には甲府も磐田も新潟も栃木もいます。町田、ヴェルディ、水戸、金沢、千葉、大宮…このへんずっと勝点差0とか1とかの接戦です。チョット目を離すとあっという間に順位が入れ替わってしまう。サポにとっては気が気ではない、けれどもたまらなく楽しみなシーズン後半になりそうです。

 

Michio Kii

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